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February 27, 2010

『鳩山由紀夫の政治を科学する』

Science_of_hatoyama_politics

『鳩山由紀夫の政治を科学する』高橋洋一、竹内薫、インフォレスト

 副題に『帰ってきたバカヤロー経済学』というのが付いてます。

 この本が上梓された昨年末の約半年前に晋遊舎から『バカヤロー経済学』という同じ共著が出たのですが、直前に高橋洋一さんは不可解な事件に巻き込まれて大学教授などを免職となっていまして、なんつうか今はリハビリ中らしいのですが、そうした最中に出たのがこの本。

 旧大蔵省は変人枠として毎年1人は理系などからキャリアを採るらしいのですが、高橋さんは数学科からその枠で入り、霞ヶ関埋蔵金を『さらば財務省』で指摘したのが有名ですね。そして竹内さんはサイエンスライターとして物理、数学などについての多くの啓蒙書を書いています(ぼくも2/3は解らないのですが、振り切られないように、読んでいます)。

 そうした理系の二人が、理系首相、しかもスタンフォードで博士号を取得した鳩山首相について、専攻していたOR(オペレーションズリサーチ)にかこつけながら、その政策を読み解こう、というのが本書。

 一読、なかなか面白かったです。
Science_of_hatoyama_politics_1_2

 理系の鳩山首相といえどもウェットな日本の民主党の党首。ならば、当たり前のように支持者のための政治を行わざるをえないのですが、その基礎は選挙で勝つことであり、そのためには浮動層に働きかけねばなりません。その二律背反とも言うべき目的と手段をとりもつのがOR(オペレーションズリサーチ)だ、というわけで、政権基盤についてドライな分析も行っています。

 ですから、いきなり「第一章 鳩山由紀夫を科学する」では政治を科学するということは選挙を科学することである、として、最初の図を提示してくれます。これが解りやすい。政権の基本は官僚たちをうまくつかいこなしつつ1)支持母体の期待に応えるとともに2)浮動票獲得のため自民党とは違う政治を行い3)スムースな政治運営を行うことで、自民党支持層にも「なかなかやるな」と思わせることだ、と。

 政権交代は予算配分を見直すことだとさんざん言われていますが、そうしたことを考えると、具体的には1)高校無償化などで文科省に渡るカネを細くし、地方交付税の割り増しで自治労の支持を固めるとともに2)最大の浮動層は直接給付で心を掴む、という戦略になる、と。また、予算編成や経済政策でヘマはできないから、元官僚だった古川元久内閣府副大臣(元大蔵省)や松井孝治内閣官房副長官(元通産省)という「過去官僚」を活用している、と。
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 高橋さんの《「脱官僚依存」の意味って本当は「脱官僚依存」なんだけど、実際は「脱官僚・依存」なんだよね》というあたりは言い回しとしても面白かったですね(p.62)。まあ「脱官僚」には、なんつうか「脱藩」みたいな気分も少しは感じられるんですがね、どんなもんでしょ。

 そして、鳩山内閣が擁護する省庁は財務省と経産省。叩くのは自民党族議員と癒着して天下りし放題だった国交省、農水省、厚労省と支持母体と対立する文科省だというのも、あまりにもわかりやすいのですが、さらに表にしてくれています。財務省には予算編成で協力してもらいたいし、経済政策でヘマはできないから経産省も擁護する、と。

 ただ、文科省を通していたカネを直接、子どもや学生を持つ家庭に支給することで、文科省の権限を弱めるというあたりは、前著『バカヤロー経済学』で強調していた教育の地方色の大切さ、なんかをもっと説明すればいいのにな思いました。
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 あと、これは高橋さんの持論である、カネがなければカネを刷れ、まだまだ日本は借金できる、という中央政府の借金総額800兆円のうち天下り団体が埋蔵しているのが300兆円、道路に使ってB/S上は財産になっているのが200兆円あり、問題なのは300兆円だけというのも強調していましたね。

 ようやくインフレターゲットのようなことを管財務相も口にしはじめたのですが、これからが興味深いところです。

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