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February 21, 2010

『竹下派 死闘の七十日』

Takeshita_70days

『竹下派 死闘の七十日』田崎史郎、文春文庫

 講談社から1995年12月に大塚清二というペンネームで書いた『経世会 死闘の七十日』を文庫版にあわせて改題、本名で出したのが本書。

 94年10月の文藝春秋に掲載された『小沢一郎との訣別』で「海部俊樹は馬鹿」「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」などのオフレコを暴露して時事通信から2週間の出社停止を喰らった元全共闘の記者だけあって、これは臨場感あふれていますね。素晴らしい。

 政治家では故・梶山静六にシンパシーを持っていることがうかがえて、梶山さん以外には歯に衣着せぬ物言いが目立ちます。

 それは、例えば検察に対しても同じ事。検察は東京佐川急便事件で渡辺元社長の弁護を担当していた赤松弁護士事務所を捜索し、違法に接見メモを押収したというんですね。そして、違法行為を暴露されるのを恐れて公開しないことを約束していたと書いてあります。12人全員の無罪が確定した03年の鹿児島県議選をめぐる公職選挙法違反事件では「踏み字」を強要したり、最近でも上杉隆さんが週刊朝日で書いた「検察暴走! 子ども”人質“に女性秘書恫喝10時間」などをみても検察って密室違法集団という側面もあるわな、とか思ったりして。

 実は、この場面は重要でして、逮捕されていた渡辺元社長が五億円を当時、自民党副総裁としてキング・メーカーの地位にあった金丸氏に供与したかどうかが焦点になっていました。金丸さん側は逮捕されていた渡辺元社長が自供させられていたに違いないと判断し、金丸さんも供与を認めて副総裁を辞任する会見を行います。しかし、これが運のツキ。これを認めたことで、金丸さんは経世会会長、衆議院議員も辞任することになり、最終的には脱税で逮捕されることになります。

 しかし、担当弁護士は検察側と違法捜査を暴露されるのを恐れて供述の一部を公にしないことを約束していたというんですね(p.47)。ここらへんは迫力ありました。

 あと、小沢さんの弱点に関しては、これでもかという感じで書いています。

 曰く、法律に関してはプロだと思い込む性癖があり人の意見を聞かないのに、五億円の授受に関して政治資金規正法の時効を間違えていた墓穴を掘ったとか(p.49)、小沢さんの行動パターンを見ると辞表を出すことと実際に辞任することとは別次元の問題で、次の行動を起こすケジメという意味合いが強いとか(p.97)、自らへの批判を人身攻撃として受け止めるとか(p.119)、些細なように見えて人間関係の機微に対する心遣いに欠けているとか(p.127)、91年3月の訪ソ時、北方領土の対価として4兆円を支払うと提案したのにゴルバチョフに断られると秘密にしたとか(p.147)、金丸会長辞任後の竹下派総会で衆議院は押さえたのに参議院は竹下さんに工作されて大部分をもっていかれて最終的には出て行かざるをえなくなったとか(p.173、押さえられたのは防衛庁出身議員だけ)、田中角栄と金丸副総裁を間近でみて官邸よりも裏方でいる方が大きな権力を握れることがわかったし、官邸での公式行事は合理主義者としては不要だと感じられるとか(p.186-)。

 小沢さんと竹下さんが決裂したのは、竹下内閣の時、すでに自治大臣を経験していのに副官房長官として支えていたのに、改造で官房長官に昇格させなかったことなんですねぇ。そして、最後は

「お前らは義理の兄弟じゃないか。兄弟ゲンカに俺を巻き込むなよ」
 と言って仲裁しようとした。金丸の進言を受けて、竹下が
「お互い名前にかぶせられて『優柔不断』とか、『独断専行』と言われているのを反省しないといかんわなぁ。互いに反省しよう」
 と言っても、小沢は
「俺も悪いがあんたも悪い。反省だけならサルでもできる」
 と痛烈に反論した、敗北のくやしさと竹下への怨みが、激しい言葉となって表れた。あまりの激しさに、金丸は、
「お前ら勝手にやってろ」
 と言って席を立ってしまった。

 という竹下派分裂後に行われた最後の三者会談の様子はすさまじい取材力だな、と思います。90年前後には加藤紘一でさえ、金竹小は三位一体と見ていたというんですからねぇ。

 田崎さんも簡単に引いていますが、せっかくですので、ヴェーバーの『職業としての政治』から引用して終わりにします。

《もちろん実際の服従で非常に強い動機となっているのは、恐怖と希望ー魔力や権力者の復讐に対する恐怖、あの世やこの世での報奨(ローン)に対する希望であり、また、それと並んでさまざまな利害関心が考えられる》(『職業としての政治』マックス・ヴェーバー、岩波文庫、p.12)

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