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January 28, 2010

『人を惹きつける技術』

Koike_cara

『人を惹きつける技術 カリスマ劇画原作者が指南する売れる「キャラ」の創り方』小池一夫、講談社+α新書

 尊敬するさくまあきらさんが日記で何回も書いているので、小池一夫さんの「キャラクター原論」のことは、知っていたのですが、それは何十万円も払って塾生にならなければ教えてもらえないものだと思っていたら、なんと新書になって読めるというんですからタダみたいなもん。

 いやー、それにしても、実際、スゴイ本でした。何回も目からウロコが落ちまくり。

 キャラクターというのはギリシア語のχαρακτηρ(カラクテール、貨幣などに彫り込まれた肖像)から来ているのですが、小池流では「見る者の心を動かす存在」であり、人間の心や頭にある見えないものや個性、性質など形にしたもの。だから人の心や感情を動かす力がある、というんですねぇ(p.24-)。心は見えないから、何か「いれもの」がいる。それがキャラクターだ、と(p.26)。

 そして、次がスゴイ。

 古代の人間は、大自然の力を前に、「神と悪魔」というキャラクターをつくり、豊作や豊漁の時には神に感謝し、旱魃や不作に襲われた時には「悪魔」のせいにして、心の安寧を得た、というんです(p.30)。キャラにすることによって、大いなる意志を感じて、あきらめたり、納得していたんだけど、だんだんそこから物語が生まれ、英雄も登場したり、壮大な物語に発展していく。まさに「キャラクター」がすべて。

 そしてイエス・キリストが世界一のキャラだというんです。なんで、イエスが世界一と断言できるかというと、そのキャラがなかった場合のことを考えればいい、と。イエスがいなければ十字軍の遠征も、第二次世界大戦も湾岸戦争も起こらなかった、と。例えば、長嶋茂雄さんがいなかったら、野球界も全く違ったものになっていたろう、と。まさに「キャラの大きさは消せばわかる」というんです。

 ここまでが「キャラクター」がいかにスゴイか、という話。

 次がヒットするキャラの法則。

 本人の口から出た言葉よりも、第三者から聞いた話のほうが、インパクトも信憑性もあるから、キャラクターは一人では起たないし(p.50)、主人公、ライバル、引き回し役の三つのキャラクターがつくる三角形が、キャラをいきいきと動かす、と。

 そして主人公には「弱点」と「オーラ」を、ライバルには「欠点」と「カリスマ性」を、引き回し役には主人公を紹介する役割だけでなくトリックスター的な要素をつける、というんです。

 テレビのワイドショーがなぜ面白く、NHKのニュースがなぜつまらない印象を与えるのか、というのは、ワイドショーは互いにキャラを起てあっているからだ、というあたりもなるほどなぁ、と。

 さらにキャラには人生を決める「大きな願い」、生活態度を決める「中ぐらいの願い」、趣味嗜好を決める「小さな願い」をつけるとヒットする、と(p.70)。

 小さな話ですが、キャラクターの名前は「カ行」がいい、なんていう話にも唸りました(p.103)。

 また、ビジネスの世界では「お客さん」をキャラクターとして認識する中で、プロファイリングをして感情移入するようになれば、空気を読めるようになるし、サービスも向上する、なんて話は、官僚たちやいまだ国鉄時代を引きずっているようなJRの人間にも聞かせてやりいたい言葉です(p.115-)。

 「おわりに」で、クリエイティブな世界、エンターテインメントの世界では、キャラクターの重要性は定着し、常識化してきたから(自分で自分のことをキャラが起っているなんて言っていたバカな首相もいましたしw)、次のレベルに行かなければならない、ということで、あえてネタバレ的にこの本を出したと書いています。

 これはクリエイターとして、本当に勇気のある言葉ですよね。あえて持っているものを捨てて、新しいものを無から生み出そう、というんですから。

 いやー、これはスゴイ本。

 あんまり言いませんが、これは「読んだモン勝ち」の本です。

 この表現を使うのは『シナプスが人格をつくる』ジョセフ・ルドゥーと『官邸主導』清水真人の二冊以来ですかね。お奨めです。

[目次]
はじめに―ヒットクリエイターが学んだ「キャラクター」の創り方とは
第1章 国境、時代、メディア―ボーダーを越えて異文化と共生する「キャラの力」
第2章 ヒットするキャラの「三角方程式」
第3章 ヒットキャラが持つ「九ヵ条」
第4章 キャラを魅力的にする「プロファイリング」
第5章 キャラクター創りのマル秘テクニック

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