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January 14, 2010

『定食学入門』

Teishoku

『定食学入門』今柊二、ちくま新書

 最初と最後は感心しません。でも、全体を読み通すと、日本人と食に関する、あるパースペクティブが得られる、みたいな本。

 最初と最後に何が書いてあるのかというと、著者による定食屋さんの遍歴。

 はじめに結論ありきで、「ご飯、おかず、汁の三位一体が定食」ときますが、例えば、著者が定食修行において重要だったと記している恵比寿「こづち」に関していえば、味噌汁はダメだと思う。

 でも、「こづち」はそれを補ってあまりあるバリエーションと、「ポテトサラダ+キャベツの千切り」というフォーマットがしっかりしているというような視点が欠けているかな、みたいな。眼高手低といいますか、情報を集めて分析する分にはいいけど、実際にどの程度味わっているのかな、みたいな疑問が残っては、この手の本というのはアカンと思うのです。

 でも、いいところはもちろんあります。

 それはB級グルメの書評として読めば、素晴らしいというあたり。古本漁りが趣味ということだけあって、地方の出版物も含めて、よく読んでおられると思います。しかも、それを時間と空間の座標軸にあてはめて、わかりやすく分類してくれています。

 《もともと、イタリア料理では鉄板を使用することが多く、それは日本にも伝わっていた》(p.56)でジュージュー焼きを説明したり、ハンバーグが家庭料理として定着する前にはスコッチエッグが家庭内洋食としての地位を気付いていたが肉のモソモソ感に嫌われたとか(p.65)、ラーメンライスの深奥を大きなトッピングの海苔を汁に浸してご飯に巻いて食べた弘明寺・マンザイラーメンに求めるとか(p.74)、日本人のケチャップ消費量を爆発的に上げたののはカゴメによる世界初のチューブ入りケチャップだったとか(p.78)、定食=独身男性のライフラインとしてみれば、そのルーツは男だらけだった大江戸八百八町に求められるとか(p.84-)、明治以降に鉄道を中心とした町づくりが進むにつれて駅前食堂が食生活に大きな影響を与え始めたとか(p.97-)、いろいろ読み込んでいる感じはします。

 でも、肝心のシズル感に関しては、唯一《薄いカツには「つくられたおいしさ」がある》(p.106)ぐらいしか感じられませんでした。

 ともあれ、期待しています。

 この言葉は知らなかったし。

 《温かい飯と味噌汁と浅漬と茶との生活は、実は現在の最小家族制が、やっと拵えあげた新様式であった》(『明治大正史 世相篇』柳田国男)

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