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January 24, 2010

『世界経済はこう変わる』

World_economics_change

『世界経済はこう変わる』神谷秀樹、小幡績

 『日本の難点』について書いた最後に、小幡績さんの「金融経済は実体経済の成長に加えて金融経済の成長への期待を織り込んで膨らむ再帰的増幅装置」という言葉の簡潔さは、神谷秀樹さんの《エクイティーをデット(負債)でファイナンスすればバブルになるし、はじけもする》(『強欲資本主義 ウォール街の自爆』p.79)と同じぐらい本質をついていると思う、と書いたのですが、この二人が光文社新書で対談したのがこの本。
 
 悲観論が嫌いな方は、お二人が「資本主義は終わった」と意気投合しているところを、「米国流金融資本主義は終わった」ぐらいな感じで受け止めながら読めば、とりあえずは、そうした見方からのパースペクティブは得られると思いますし、つい、この間のことですが、ずいぶん昔にも感じるポールソン財務長官がゴールドマン・サックス出身者がCEOやってる金融機関に公的資金バラ巻いたとか(p.85-)、通貨危機の時どこの国も考えるのは自国の通貨を切り下げて貿易で売って儲けることで韓国もそれをやったが、輸出国に需要がなくて伸びなかったとか(p.103-)、いろいろ面白い話も満載です。

 とりあえず、お二人の主張を、ぼくなりに分かりやすくまとめると、こんな感じでしょうか。
 
 金融危機の前に投資先が実体経済にもう残っていない前代未聞の資本が余る状態になり、この時「資本主義は終わった」がファンドの破綻で新しく動ける資本が貴重になったきて、だから資本をキチンと使いこなせる本物の資本家が必要になってきている、と(p.23-)。それと同時に、松下電器と住友銀行、フォードとゴールドマンサックス、GMとモルガンスタンレーのような企業とそれを育てるバンカーという関係がいまはなくなったのが大きな問題だ、と(p.115-)。こうした中で、アメリカでは2011年に社債の借り換えのピークが来て、その額は1000億ドルに上るが、このほかどれだけ腐っているかわからない商業用不動産ローンの残高も4兆ドルある、と(p.37)。米国経済がこうした恐慌から立ち直るためには外需が必要で、外需がないと経済は回復しない、と。それはアメリカも第二次大戦直後に再び大不況となったことをみてもわかる、と。最終的に米国経済は朝鮮戦争で回復したわけで、1929年から続いた大恐慌は第二次大戦と朝鮮戦争によって25年かかって復活した、と(p.41-)。だから今でいえば、インドと中国が戦争ぐらいしてくれないと立ち直れないないんじゃないか、と。さらに、今後成長するのは中国、インド、ブラジルなので投資資金はこういったところに集まり、アメリカには回ってこない、と(p.93)。米は米国債のオークションを年200回やっているが、売れないと金利が上がる。中央銀行が引き受けざるを得なくなり、お札を刷ることになる(p.106)。米の財政赤字は10兆ドルで返せない。結局、FRBがドルを印刷するしかなく、最終的には大インフレになる、と(p.65)。
 
 まあ、かなり悲観的ですが、どうなんでしょうね。

 このほか、サトウキビから石油化学製品をつくれる技術は、原油価格が1バレル=50ドルの水準でペイするところまできているとか(p.142)、紙幣の信用がガタ落ちなので金(Gold)の価格が上昇しているけど、最終的には金も価値の暴落危機にさらされる可能性があることには変わらないので、それなら排ガスの触媒としての使用価値のあるプラチナの方がまだいいとか(p.96-)なんかも面白かった。
 
 ただ、「お金では測れないものが重要性を増す」という後半のあたりは、多少退屈。個人的には仏には「橋と道路」という意味の最古のグランゼコールであるエコール・デ・ポンゼジョセ工科大学があって、そこは金持ちになるためのビジネススクールではなく、公共性の強い国営企業の経営者を育てる機能を持っている(p.161)というあたりしか、具体論はなかったような感じを受けましたかね。

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