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January 16, 2010

『1968』#4 政治にカネがかかることはブントも教えてくれる

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 『1968』の上巻って、どこを紹介しようかな、と思っていたんですが、最近の出来事もあって、俄然思い立ったのが政治とカネの話。

 ぼくは大手メディアが「政治にはカネがかかる」ということを、あまりにも軽視しているというか、名前が売れてから政治家になる人ばかりが身近にいるせいなのか、ほとんど政治とカネの問題は追及対象にしかなっていないことが、とてもおかしいと思います。

 そんなことを考えながら読んだのが上巻の第3章 セクト(上)。

 長くなりますが、引用します(p.190)。

 だが、ブント指導部が苦労したのは財政だった。全学連書記次長だった東原吉伸によると、大卒初任給が一万三五〇〇円だった六〇年当時、「早稲田車庫から国会議事堂まで都電チャーター料1台5000円、バス7000円」が必要で、一回のデモの動員でも早大だけで二〇~三〇台のバスなどが必要だった。島も回想記で、「闘いが思いもよらない規模に一挙に膨張したために闘争資金も十倍、二十倍も要求される。ふえていく常任活動家の全国オルグ旅費、週刊発行の『戦旗』などの印刷費、大量検挙者の救援活動費、宣伝カーの調達費」などのため、「考えられるあらゆる方法をつかい金策に走りまわった」と述べている。
 島によると、「安保では、月に一〇〇〇万円の規模でカネが必要だった」という。借りてきた宣伝カーも、激しいデモで壊されてしまうため、「五〇万円くらいの弁償をしなければならない。それが毎日だ」。全学連の基本的な資金は各大学自治会の加盟費でまかなわれていたが、「全学連の加盟費なんかで足りるわけがない。文化人からも集め、街頭カンパもやった。条件のつかないカネなら、悪魔からだって借りたかった」と島は述べている。

 「月に一〇〇〇万円」は大卒初任給からの単純比較でいえば、今なら二億円ぐらいでしょうかね。

 ブントはこうしたことから、戦前は共産党の委員長で、その後は右翼の大物になった田中清玄から寄付を受けるわけですが、このことをTBSラジオは「ゆがんだ青春ー全学連闘士のその後」という番組で批判します。けれども、こんな批判は、こうした運動をやったこともない人間特有の高みからの批判だとしかぼくには思えません。

 後に清水丈夫は、島成郎さんへの追悼文の中で《「大変な財政危機のため、大半の時間はじつは金策に費やしておられたといっても過言ではない状況でした。そのためもあって、私たちと酒を飲みながら疲れ切った心身をいやしつつ、大きな夢を語り、英気を養ったということもたびたびあったわけです」》と書いているそうです(p.193)。

 「大半の時間はじつは金策に費やしておられた」というのは、小選挙区が導入される前の自民党の政治家もそうだったんだと思います。それが、あまりに理不尽だから、ということで、選挙制度改革が行われたんだと思いますが、今でも、カネが必要だということにかわりはないと思います。

 ハガキを出したり、演説会場を借りたり、街頭で演説するのだって道路使用料を国や自治体に払わなければ辻説法ひとつだってできやしない。

 それを無視したような「政治とカネ」の問題に対する批判は、批判になっていない、とぼくは『1968』を読みながら改めて思います。

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