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January 04, 2010

『1968』#3 三島由紀夫とパラダイム転換

 14章「1970年のパラダイム転換」に関して引き続き。

 東大全共闘が69年に三島由紀夫を招いて討論会を行ったのは有名ですが、このことに関しては、これまでは単なるアダ花というか、才気あふれる若者たちの三回転半ひねりを見事決めてみましたみたいな趣味の問題として捉えていたんですが、小熊さんはちゃんと理由付けを行っていて「なるほどなぁ」と感心しました(p.261-)。

 それは両者が戦後民主主義批判という共通のベースを持っていたこと。

 小熊さんは68-69年の東大全共闘のビラ類には天皇制に関する批判はほとんどないというか重要な問題だとは考えられてはなかった、としています(山本義隆さんがまとめて国会図書館に寄贈したビラなどを全部読んだんでしょうね)。

 今から考えると不思議なんですが、戦後の知識人たちを「道化役者」と揶揄して、戦後の平和と民主主義を嫌った全共闘と三島由紀夫が交わる接点があったんだな、と。

 だから5月13日東大教養学部900番教室で行われた討論会で、三島由紀夫が「安田講堂で全学連の諸君がたてこもったときに、天皇という言葉を一言彼等が言えば、私は喜んで一緒にとじこもったであろう」「天皇と諸君が一言言ってくれば、私は喜んで諸君と手をつなぐのに、言ってくれないからいつまでたっても殺す殺すといっているだけのことさ。それだけさ」という言葉を発したんだろうな、と。

 しかし、華青闘などからアジア侵略の問題が提起されるに及んで、《サヨク=マイノリティ差別や天皇制や戦争責任問題を提起している人びと》という図式が定着していった、という14章はなかなか面白い。

 もしこの分厚さに負けそうな方は、下巻は14章と最後の結論だけでも読まれたらいかがでしょうか。

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