『鳩山一族 その金脈と血脈』
『鳩山一族 その金脈と血脈』佐野眞一、文春新書
なぜか鳩山一族は人気があります。現総理大臣の由起夫だけでなく、祖父の一郎も「鳩山ブーム」を巻き起こし、1955年2月の総選挙では民主党を院内第1党に躍進させ、11月には自由党と保守合同して自由民主党を結成させます。その55体制が50年以上続いたんですからたいしたもん。
その「鳩山」という名前からして優雅なイメージはありますし、音羽御殿と呼ばれる自宅も、成金趣味といえばそうかもしれませんが、少なくとも嫌悪感は抱かせないような仕掛けがあると感じます。それは、どこなく、いい意味での「お坊ちゃま」を感じさせるからではないでしょうか。
この本は、日本のケネディ家に喩えられる鳩山家の成り立ちから、いわゆる「地盤、看板、鞄」を盤石のものとする過程を、著者らしく、いつものように露悪的に書きたてた本です。
由起夫と邦夫の鳩山兄弟の曾祖父である鳩山和夫は、安政三年(1856年)、美作にあった勝山藩の江戸留守居役の四男として虎ノ門の江戸藩邸で生まれ、その家柄は藩中屈指だったといいます。やがて大学南校に進み、成績優秀によりアメリカへ留学。東大法学部の講師を経て、日本初の弁護士事務所を開設したというんですから、途中でのゴタゴタは多少あるものの、目もくらむような経歴の持ち主です。この和夫が1890年にまだ草深かった音羽の高台に求めた土地がいまの御殿のルーツだそうですが、政治家としては衆議院議長で終わっています。
妻に見栄えは悪いもののウルトラ教育ママの春子を迎え、生まれた子供が後に首相となる一郎と、東大で「我妻、岸」と並んで三羽烏と呼ばれた秀才の秀夫というんですからたいしたもん。
由起夫と邦夫の兄弟もそうですが(高校は兄が都立小石川、弟が教育大付属駒場)、どうも鳩山家は弟の方が頭は良いという賢兄愚弟ならぬ、ハイレベルながら賢弟愚兄の傾向があるようです。
それと共通しているのが艶福家であること。
一郎の長男で東大をトップで卒業して大蔵事務次官、外務大臣と進んだ威一郎も芸者の愛人との間に子どもも設けていますし(p.128)、一郎の弟で早死した秀夫には、もっとすごい話も(ここには書かれていませんが)聞えてきます。
でも、まあ、こうした話は、当時の社会常識からすれば、全然、許せる範囲だとは思います。
それよりも、ぼくが知らなかっただけでしょうが、改めてビックリしたのが由起夫と邦夫の母親である安子さんの実家であるブリヂストンの話。創業者である石橋正二郎が財をなしたのは地下足袋だったんですね。それが地元・九州の炭鉱夫に売れ、やがては絶縁性や静音性によって陸軍にも採用されていった、と。世界一のタイヤメーカーとなったブリヂストンの興りは地下足袋の底に使われていたゴムだったんですねぇ。
佐野さんらしく露悪的に書けば、鳩山一族は不正に財産を保ったかのように感じさせられますが、まあ、常識的に考えれば、よく財産を保ち、同時に一族の学力も保ったもんだと思います。
目次
はじめに 「宇宙人」宰相の誕生
第1章 自民党政権に幕を下ろした“弟鳩”
第2章 幕末に始まる秀才の系譜
第3章 鳩山一郎の虚像と実像
第4章 「音羽御殿」を守った烈女たち
第5章 保守合同と保全経済会事件
第6章 誰も書けなかった鳩山金脈
第7章 地下足袋“ファウンダー”石橋正二郎
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