« 税制改正大綱と政府税調 | Main | Felicita`の幸福なコース »

December 26, 2009

『成功の秘訣は 頭より心、ド根性だ!』

Niwa_uichiro

『成功の秘訣は 頭より心、ド根性だ!』丹羽宇一郎、文春文庫

 尊敬する経営者、伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長が07年に出した講演録『汗出せ、知恵出せ、もっと働け!』を改題して文庫化したのが本書。

 あとがきでご本人も書いていますが、ド根性みたいな言葉を使ったのは、ボストン・グローブ紙に載ったウェストポイント卒業生に関する記事を読んで感銘を受けたからだ、としています。それはウェストポイントで脱落しない要素として卒業生があげていたのがGritだったというのですね。

 Gritには「挑戦への意欲」「気骨」という意味でもとれますが、丹羽さんは「ド根性」と訳して、霧の中を地図なしに進むような世界だからこそ、知性だけでなく「ド根性」も必要なのではないか、と説いているのです。

 丹羽さんのメッセージはシンプルで、それは著書のタイトルに表れされています。『人は仕事とで磨かれる』では「人は仕事で磨かれる。今でもこの信念は揺らいでいません。もっと言えば、人は仕事で磨かれ、読書で磨かれ、人で磨かれる。この三重奏だと思っています」と書いておられますし、改題される前の本書のタイトル『汗出せ、知恵出せ、もっと働け!』では資源のない日本で1億2000万人が喰っていくためには人と技術を資産として汗を出して知恵を出して働いて外資を稼ぎ出すしかない、という信念です。そして、老人たちは食い逃げ世代と後ろ指をさされぬように70過ぎても働いて少しでも税金を納めるとともに、「若者よ、DNAのランプが点灯するまで努力せよ!」というものです。

 丹羽さんの話は全て経験に裏打ちされ、しかもそれがシンプルに表現されていて、普段、経営者はこんなことを考えているんだな、ということがリアルにわかります。しかも、それが幅広い。八百屋を営んでいるオヤジさんが売り物のリンゴを食べても法律違反にはならないが、株式会社では株主が資産を勝手に持ち帰ると横領になると個人商店と株式会社の違いを説明した後(p.84)、日本でもアメリカでも大企業では社外取締役が一時期流行ったけど、友人同士が社外取締役に互いに指名しあって高額なボーナスを与え合うことになるとか(p.94)。

 丹羽さんは食糧畑を歩んでこられたということもあって、国連WFP協会の会長をやっています。「食べられるから学校へ行く。最初はそれでも良いではないか」「どんな理由であれ、学ぶ時間をもつことは大切です」ということで、現地でキチンと配給が行われているかということもケニアなどに行って調べるとともに、著書の印税はすべて国連WFP協会に寄付しています。

 こういう人が本当にカッコ良い人なんじゃないですかね。

 最後に閑話休題。

 06年1月に行われた「第1章 二十一世紀日本の光と影―イノベーションと格差社会」で触れていた話題ですが、当時、日本は185兆円の純債権を持っていて、それは5年前の2倍となっているとしています。これが07年末にはいったん250兆円まで拡大したものの、リーマンショックなどもあって激減。しかし、ドル換算の対外純債権額は2009年末で2.5兆米あり、ドル安であって目減りはしているものの円換算では210兆円と世界最大の対外債権国であることには変りません。

 まあ、ご存じのように一般政府債務残高も世界最大であるわけではありますが、まだ、これだけある資産をどのように使うか、ということを考えなければならないと思うと同時に、その方向は丹羽さんが「あとがき」でも書いているように、社会、環境のため、という変化方向でしょう。日米で新政権が生まれたのも、そのためだ、とも丹羽さんは書いています。

目次
第1章 二十一世紀日本の光と影―イノベーションと格差社会
第2章 巣立つ若者たちへ贈る
第3章 M&Aとコーポレートガバナンスの行方
第4章 企業改革に終わりはない
第5章 エリートなき国は滅ぶ
第6章 「人を動かす経営」とは何か
第7章 日本は「人と技術」なくして成り立たない
第8章 WFPの活動と国際貢献
第9章 稼いだ金は、誰のものか?
第10章 曲がり角に立つ日本とリーダーの使命
第11章 地域飛躍の戦略のために

|

« 税制改正大綱と政府税調 | Main | Felicita`の幸福なコース »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 『成功の秘訣は 頭より心、ド根性だ!』:

« 税制改正大綱と政府税調 | Main | Felicita`の幸福なコース »