« Felicita`の幸福なコース | Main | 今年の一冊は『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子 »

December 28, 2009

『意志の勝利』再見

Triumph_des_willens

 随分前に16mmみたいなフィルムで音も良くない小劇場で見た記憶がありますが、内容は衝撃を受けました。

 だって、単なる党集会の記録映画ですよ。それなのに2時間近くも飽きさせず、見る者を引っ張り続ける。こんなことが可能なのか、と驚きました。

 実際、ゲッペルスも映画の中の演説で「プロパガンダは芸術」である、と手の内をバラしているように、どんな愚劣なイデオロギーも、ファシストたちが愛したような美意識で、徹底的におカネをかけて映像化されれば、受けいれられる、と。

 あまりにも有名なシーンですが、冒頭、まるで創世記の神のような主観の視点でヒトラーを載せたユンカースJu52が雲間を飛行します。巨大な雲、そして高度が下がると党大会の行われるニュルンベルクが見えてくる。バックは『ホルスト・ヴェッセルの歌』。

 街並みの屋根にJu52の影が落ち、それが屋根の凹凸に合わせて生き物のような動きをするシーンは創世記1:2の「神の霊が水の面を動いていた」ようでしたが、今回、上映された英語字幕付きのフィルムでは、少し、この場面が少ないように感じたのは、ぼくの勘違いでしょうか?

 まあ、それはおいといて、古都ニュルンベルグでの歓迎パレード、ホテル・ドイッチャー・ホーフの二階から手を振るヒトラー、歓迎の音楽式典と続きます。

 ヒトラー・ユーゲントが集まる巨大なキャンプ場でのシーンなどを挟んで、映画の第一声は美声のルドルフ・ヘス。「ヒトラーはドイツであり、ドイツはヒトラーである」というニュルンベルク裁判でも語ったセリフをここでも声高らかに宣言しているのは歴史の皮肉でしょうか。

 この党大会は1934年9月4日から6日間開かれたのですが、そのわずか2ヵ月前に、SSによるSAの粛正が行われました(長いナイフの夜事件、Nacht der langen Messer)。それもあってか、SAの式典は夜のシーンになっているのですが、これはSAの本質を突いている感じがします。

 闇と光の演出が素晴らしいと感じたのは、ヒトラーが松明を持って行進する集団を観閲しているシーンで、顔が照らされた後に闇に沈むというシーンが交互に流れることで、集団の動きを表しているところ。

 いろいろあって、ヒトラーが無内容な精神主義的な演説をやって、6日間も続いた大会もお開きになるのですが、ラストでも使われるのがナチス党歌『ホルスト・ヴェッセルの歌』。まさに最初と最後がつながっての大団円。

 そして最初から最後まで、映像と演出はスタイリッシュです。

|

« Felicita`の幸福なコース | Main | 今年の一冊は『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子 »

「文化・芸術」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/47140954

Listed below are links to weblogs that reference 『意志の勝利』再見:

» 意志の勝利 Triumph des Willens [マチルダベイビー!]
昨年、野党に転落した自民党の総裁に就いた谷垣禎一氏が民主党若手議員を指して、「民主党議員はまるでヒトラー・ユーゲントのようだ」と評して物議を醸したのは記憶に新しいところ。 [Read More]

Tracked on January 08, 2010 at 06:07 PM

« Felicita`の幸福なコース | Main | 今年の一冊は『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子 »