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October 30, 2009

『戦争の日本近現代史』

Kato_yoko_senso

『戦争の日本近現代史』加藤陽子、講談社現代新書

 加藤陽子さんの本は、何を読んでも新しい知識が得られるだけでなく、書いていることにダブりが少ない。良心的な書き手だと思います。

 今回の『戦争の日本近現代史』には『東大式レッスン!征韓論から太平洋戦争まで』とやや恥ずかしい副題が付けられていますが、それはさておき、ハッとさせられたのは2点。

 ひとつは日清戦争の勝利によって、日本は清に対して朝鮮国は「完全無欠の独立自主」の国であることを認めさせましたが、それは《東アジアの国際関係が、中華帝国システムではなく国民国家システムで律せられる構造に変わったことを示した点で、象徴的な事件であった》(p.128-)としていること。それまでの華夷秩序による宗属関係から、ギデンズの定義する「他の国民国家と形づくる複合体の中に存在し、画定された境界(国境)をともなう領土に対して独占的管理権を保有する一連の統治形態であり、この国民国家による支配は、法と、さらに国内的および対外的暴力手段に対する直接の統制によって正統化」される状態へ移行された、というわけです(p.126)。

 こうした変化をもたらしたのは、日本だったわけですが、アフリカに失敗国家というか破綻国家が多いのは、地域に日本のようなゴリゴリと国民国家システムへの転換を迫って侵略してしまうような国がなかったからなのかな、とつまらぬことも考えました。加藤さんの解説によると国民国家は国民国家システムと呼ばれ、国民国家は、他の国民国家とのシステム的関係においてのみ存在すると考えられるわけですから。

 2点目は、アメリカが国際連盟に加盟しないことになった件では、米国内で日本人に対する移民法の取扱が意外と大きなネックになっていた、という指摘。第一次世界大戦後のパリ講和会議で日本は、国際連盟に人種差別撤廃に関する条項を入れろと要求します。これは当時、アメリカで日本人などアジア人に対する移民規制が論議されていたことを牽制したものでした。これに対してアメリカ国内では、移民に対する規制は内政干渉にあたるという反発が生まれ、ウィルソン大統領はこの条項を入れないだけでなく、日本側が求める前文への掲載さえも実現しない、という結果となります。

 ここで問題となるのは、なぜ日本がこんなにも移民問題にこだわったのかといこと。当時、日本が失う移民の総数は150名に過ぎないと言われていたそうです(p.191)。そんな些細な問題のために、なぜ日本がこだわったのかというと、単なる体面上の問題だけでなく、アメリカが日本を他のアジア諸国と同じように扱うことは、中国による軽侮につながる恐れがあると考えたから、だというんですね(p.192)。

 日本とアメリカには《お互いに最も避けたい方式でしか対話ができない》原理的な対決姿勢が生まれてきた、という指摘にもうならされました(p.198-)。

[目次]
第1章 軍の論理を考える
第2章 政友会における「変化の制度化」―田中義一の方法
第3章 日露戦争開戦と門戸開放論―戦争正当化の論理
第4章 中国とアメリカを同時に捉える視角―一九一四~一九一九年
第5章 ロンドン海軍軍縮問題の論理―常備兵額と所要兵力量の間
第6章 統帥権再考―司馬遼太郎氏の一文に寄せて
第7章 反戦思想と徴兵忌避思想の系譜
第8章 徴兵制と大学
第9章 敗者の帰還―中国からの復員・引揚問題の展開
第10章 政治史を多角的に見る

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