『ウィトゲンシュタインはこう考えた』#4
[ゴプラナ号期]
ウィトゲンシュタインは第一次大戦に従軍し、軍隊生活の前半はポーランドのヴァイクセル川で巡視船ゴプラナ号に乗ってサーチライト係として過ごします。
このゴプラナ号時代は二つの点で重要だと言われてきました。ひとつはトルストイの要約福音書との出会い、もうひとつは論理的写像理論の発見です。
写像理論に関しては『論考』4.01のに「命題は現実の絵である。命題は我々が想像するような現実のモデルである」と書かれていますが、『ウィトゲンシュタインはこう考えた』では、ゴプラナ号時代に書かれた草稿を追いつつ、命題画像説の発見(1914/9/27-10/5)から、《像を否定することは一体可能なのか》(11/26)という問いを丹念に追っていきます。
もちろん画像は否定できません。11/26にも《不可能である。そしてこの点に像と命題の相違がある》と書かれています。そして続けて《像は命題としての役割を果たしうる。しかしそのおりには、いまや像に何事かを語らせるものが、像に加わるのである。つまり、私は像が正しいということを否定できるだけであって、像を否定できないのである》というわけです。
草稿の12/15には《(命題という)像をめぐる論理の足場が論理空間を決定する》と書かれています。
これと10/20の《命題はそれの論理的足場の助けで世界を構成する。従って命題において、それが真ならば全ての論理的なものがいかなる事情にあるかをも見てとれることが可能である。例えば偽な命題から推論することが可能なのである》を引用しながら、鬼界さんは以下のように解説します。
否定、連言、選言、条件といった「論理定項」とは、命題に後から加えられる何かではなく、あらかじめ命題の周りに配置された思考の道を組み立てる装置なのである。絵画が否定できないのは、こうした装置とそれが組み立てる足場を自らの周りに持っていないためなのである(p.96)。論理空間という観点から考えるなら、一つ一つの命題はもはや独立した存在でも、一個の像でもなく、巨大な思考空間を支える格子の中の一つの格子点にすぎない(p.98)。
絵画と言語は、我々に無限な意味を与えることのできる二つの形式である。絵画は意味を持ち、何かを語る。しかし絵画の意味を限定することも、語り尽くすこともできない。それは、絵画の「語り」と「意味」が、言語とは別の次元に存在し、絵画の伝える「思考」が論理空間には存在しないものだからである(p.101)。
言語で何かを語るとは、無限に広がる思考の経路への入り口を示すことなのである(中略)言葉を持つ存在としての人間は、すでに無限の思考宇宙の中に存在しているのである(中略)人間は言葉をもつ存在であることにおいて、すなわち人間であることにおいて、すでに「神」と内側から接しているのである。これが人間が「神と接しうる唯一の道である(p.102)。
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