『ウィトゲンシュタインはこう考えた』#3
『ウィトゲンシュタインはこう考えた』には、よくまとめられたサマリーがありますので、ざっくり知りたい方はぜひご覧ください。
ということで、上の方と同じことをやっていてもしょうがないので、印象に残っているところを書いていきます。
[ベルベットモンキーの言語と人間の極大言語(p.64-)]
東アフリカにいるベルベットモンキーは「鷲が来た」「大蛇が来た」「豹が来た」という三種類の警戒信号を使っているそうですが、問題は「かつ」「または」「でない」などの論理的接続詞を結びつけて「豹が来れば、大蛇は来ない」というような推論が表現できないこと。ところが、人間の言語は「語ることが可能なすべてのことを語りうる」極大言語である、と。
おそらくサバンナにいたヒトは、例えばリーダーが「豹が来れば大蛇は来ない。豹が来た。だから大蛇は来ない」という言葉を発すれば、その論理の正しさを理解できたのではないか、と。
そして、ここで重要なのは人間の言語がまだ来ていない「存在していないもの」も示すことができること。
しかし、論理は、それ自身では語りにくい。というか論理は語ることを可能とする超越的条件である、と。
「語ることそのものを可能にしながらも、それ自身については語ることができない何ものかとしての論理」であるかもしれない、と。
例えば、こうした推論は論理記号で表すと複雑になるが、言葉で表現すると簡単になります。
人間がこのように強力な表現力を持つのは無制限の命名言及能力にある、と。
しかし、何にでも名をつけ、何ついても語れる極大言語であるがゆえに、存在するはずのないものにまで名を与えるなど様々な問題を抱え込み、「ラッセルのパラドックス」のようなものも出てくる、と。
『論考』に関して、それは論理神学と呼べるのではないか、という鬼界さんの指摘も面白かったかな(p.86)。
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