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July 19, 2009

『「51歳の左遷」からすべては始まった』

51_kawabuchi

『「51歳の左遷」からすべては始まった』川淵三郎、PHP新書

 これは書こうか書くまいか迷っていたんですが、あえて思い切って言えば、中高年にとって「希望の書」ですね。

 コアなサッカーファンには、いろいろ言いたいこともあるでしょうけど、古河電工から左遷の通告を受けた1988年を期にサラリーマン生活に見切りをつけ、日本サッカーリーグのプロ化に邁進、Jリーグを立ち上げて91年にはチェアマンに就任、1993年からプロリーグをスタートさせ、98年にはフランスW杯出て、2002年にW杯主催したという仕事を全て50歳を超えてからやり遂げたというのは、やはり多くの人たちに勇気を与えてくれるんじゃないでしょうか。

 その原点は本社で取締役になれなかったということでサラリーマン生活にスパッと見切りをつけて、Jリーグを立ち上げたことなんですが、サラリーマン生活もなかなか充実しているんですよ。当時としては珍しくツルんで飲まないスタイルだったと書いてありますが、キッチリとプライベートを充実させるとともに、出向先の卸の経営を立て直すなど、組織運営も学んでいきます。

 日本サッカー協会がよかったことのひとつは、丸の内グループと呼ばれた旧財閥系の優良会社がサッカーに理解があったことだと思っています。

 うまい時期に東京オリンピックがあって、クラマーさんの提言で日本サッカーリーグもたちあがったけど、バックとなった企業が超優良でしたよね。高校、大学とサッカーをやってきた学生たちの受け皿となるとともに、いい意味での常識人をつくりあげていったと思います。

 そうした経験で培われた組織運営のノウハウ、グローバル社会とのコネクションをベースにJと日本のサッカーは大きく発展してしていきました。

 FIFAのことなど知らなかったであろうナベツネさんがベルディを東京に移して読売の名前を前面に出そうとして、リーグ脱退だ!とぶちあげたときも「出て行くならどうぞ」と無視できたのも、世界のサッカーというバックグラウンドがあったから。

 川淵さんは、うまくインフラを使ったんですね。

 だから驚異的な発展もあった、と。

 もちろん、それを使う立場になれたのもサッカーでオリンピックに出て得点も決めて、日本代表監督もやって、サラリーマン生活をマジメにつとめたから。そしてたった1回のプロ化のチャンスを逃さなかったから。

 PHP新書ということもあるんですが、この本を読むと、やっぱり日本の正しいサラリーマン道みたいな話が強調されているんですよ。人事は直接、口頭で伝えなきゃダメだ、とか。

 もちろん、それは大きく間違っているわけじゃないけど、限界はあると感じました。

 日本のサッカー界になんとなくただよう閉塞感は、あえて言わせてもらえばアマチュアリズムのシッポを引きずっていいることだと思います。

 チェアマンとかキャプテンとかなでしこジャパンとか名称にこだわって、それなりに成功したけど、川淵さんの引き出しもそう多くはないんですね。他の意外とお偉いさんでも、自分の成功体験から抜け出せないんですが、「なんだ、同じ事やってるだけじゃない」と思うんですわ。

 そのパターンから脱するシステムをあらかじめ組み込んでおくことがプロの組織だと思うんだけど、そこまでプロフェッショナルにはなりきれていない、というのがいまのところの成長の限界なのかな、と感じながら読み終わりました。

 最後に蛇足。

 ぼくが川淵さんに対する批判で「ちょっと違うよな」と思ったのが、講師料の出る講演会へのアシに協会のクルマを使ったとかいう批判でした。

 こんなことまで文句を言われたら公職なんて誰もやってられませんよ。批判する人たちにはそうした常識にかけてるな、と。そうした批判をする人たちには「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」(ヨハネによる福音書 8:7)と問いたいですね。

◆姦通の女
ヨハ 7:53 〔人々はおのおの家へ帰って行った。
ヨハ 8:1 イエスはオリーブ山へ行かれた。
ヨハ 8:2 朝早く、再び神殿の境内に入られると、民衆が皆、御自分のところにやって来たので、座って教え始められた。
ヨハ 8:3 そこへ、律法学者たちやファリサイ派の人々が、姦通の現場で捕らえられた女を連れて来て、真ん中に立たせ、
ヨハ 8:4 イエスに言った。「先生、この女は姦通をしているときに捕まりました。
ヨハ 8:5 こういう女は石で打ち殺せと、モーセは律法の中で命じています。ところで、あなたはどうお考えになりますか。」
ヨハ 8:6 イエスを試して、訴える口実を得るために、こう言ったのである。イエスはかがみ込み、指で地面に何か書き始められた。
ヨハ 8:7 しかし、彼らがしつこく問い続けるので、イエスは身を起こして言われた。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」
ヨハ 8:8 そしてまた、身をかがめて地面に書き続けられた。
ヨハ 8:9 これを聞いた者は、年長者から始まって、一人また一人と、立ち去ってしまい、イエスひとりと、真ん中にいた女が残った。
ヨハ 8:10 イエスは、身を起こして言われた。「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。だれもあなたを罪に定めなかったのか。」
ヨハ 8:11 女が、「主よ、だれも」と言うと、イエスは言われた。「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない。」〕

以上、いわゆる「姦通の女」を新共同訳から。
全体が〔〕で囲われているのは、このテキストが古い写本に見つからず、後代の加筆ということが明からです。でも、いい話ですよね。専門家じゃないのでよくわかりませんが、この話は、ローマによる弾圧後、教会に復帰してきた信者をあまり虐めるな、ということから挿入されたというのも、なんとなく組織を考える上でもいい話だと思っています。

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