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June 12, 2009

『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本』

Tachibana_books_2

『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』文藝春秋、立花隆

 先日、読みたい本がなくなり、たまたま近くを通ったので神田の東京堂書店に入りました。ここは立花隆さんのフランチャイズの書店で、週刊文春で連載している「私の読書日記」で取り上げる本を大人買いするところ。でも、新刊コーナーを2~3周してもめぼしい本がみつからない。ということで、以前はあった立花さんのコーナーを探したら3階に移っていたんですが、「読みたい本が見つからないときには大量の書評を読むに限る」ということで、週刊文春の連載をまとめた二冊目のこの本を買いました。

 さすが、単に連載を並べただけでなく、最初と最後に書き下ろしを入れるサンドウィッチ構造になっているのは良心的。それが序の"大量読書術・速読術"と最後の"捨てない技術"。

 "大量読書術・速読術"に関しては『本を読む本』(アドラー/ドーレン、講談社学術文庫)でも推奨されている目次や表題、序文を確かめた後にパラグラフごとにざっと読むことで全体像を掴むというスキルと重なりますが、速読でページを目で追っているだけでも無意識には様々な情報が入ってきて脳を刺激しているという主張やヴィジュアルの解説が今は大切なんだというあたりは比較的新しいところでしょうか。最後は『捨てない技術』という本を徹底的に批判したもの。社会人としてまともに仕事をしてきたならば資料などは簡単に捨てられるハズがなく、どうしようもなくなって泣く泣く捨てるものだ、という話。ぼくも毎年、本棚が多くなって困っているのですが、分かります。

 さて、書評の方ですが、いろいろ面白い断片情報を得ることができましたよ。いきなりエデンの林檎の木も、仏陀が悟りを開いた菩提樹も、イエスがかけられた十字架も一種の宇宙樹であるという『世界樹神話』(ジャック・ブロス、八坂書房)なんかにそそられます。

 旦那の浮気相手の女性を殺害して局部をくりぬき、それを帰ってきた亭主に刺身として喰わせたなんていう事件をイラストで描いていた『大阪の錦絵新聞』(土屋礼子)なんつうのにも驚きました。

 『詐欺とペテンの大百科』(カール・シファキス)は購入。

 役小角(えんのおづの、修験道の開祖・役行者)の伝説を検証した『超人 役小角』(志村有弘)も時間があったら読みたい。立花さんも知らなかったという「ヘントの祭壇画」などについてふれた『失われた聖櫃』ハンコックもそんなものがあるのか、という感じ。

 中川一郎などにも積極的に働きかけていたという旧ソ連の『対日工作の回想』イワン・コワレンコも面白そう。

 一時、大量に出された毛沢東本には興味がわかなかったのですが『毛沢東最後の女』京夫子で、毛沢東の最初の妻は父と関係してしまい、それを恨みに思った毛沢東は生涯父を恨み、乱れた女性関係を続けていたというのは、なるほどな、と。昔は日本を含む東洋ではこの手の話が多かったみたいですね。ぼくがウワサで聞いた話でも、消費税のT総理で似たようなことがあったとか、なかったとか。

 日本が海外技術協力の一環としてタイの印刷用文字をつくり、現地で技術書が初めて出版されたという『タイ文字を創れ』福居浩一は、聞くだけで素晴らしい話。

 読むか読むまいか悩んでいた『マクナマラ回顧録』は結局、買いました。

 『娼婦の歴史』ヴァノイエクによるとローマ時代は男も女も、売るも買うも当たり前で、性に抑制がなかったというのんですが、どんなもんなんでしょうね。

 ピエール・ベール著作集に収められている『歴史批評辞典』はいつか読んでみたい。

 戦前の日本の主な航空機製造工場はいずれも隣接する飛行場を持っていなかったため、牛車に乗せて飛行場まで運ばなければならなかったなど旧軍の笑えないバカさかげんを集めた『日本軍の小失敗の研究』三野正洋も購入。

 東條英機は日米開戦直前まで人造石油の開発が進んでいると思い込んでいたという『油断の幻影』高橋健夫もヒマになったら読んでもいいかな。

 南京大虐殺の事件当時にジメーメンスの現地支社長をやっていたジョン・ラーベはナチスに上申書を提出していますが、その内容をまとめた『南京の真実』を《日本にはいまだに、「南京大虐殺まぼろし」説をとなえる人々がいるらしいが、そういう人々にぜひ読ませたい》と書いてあるのは大賛成。

 黄河文明だけでなく、揚子江にも古代文明が栄えていたことが発掘調査されていますが『長江文明の発見』徐朝龍もいつか読んでみたい本だけど、そうやっているうちにもっとまとまった本が出ると思う。

 インディアンたちがユーラシア大陸からベーリング海をわたってアメリカ大陸にわたった旅路を口承伝承しているイコロイ族の話を内容をまとめた『一万年の旅路』ポーラ・アンダーウッドは引用されている渡海の部分だけでも素晴らしい!

 『ピュロン主義哲学の概要』エンペイリコス、西洋古典叢書はたぶん買います。

 将来の電力需要をまかなうためにはヘリウム3による核融合しかないが、それだけのヘリウムは木星にしかない。木星からヘリウムタンカーを輸送できれば今後、数千年間はエネルギーの心配はなくなるが、地球の300倍以上の引力から脱出できるエンジンは開発できそうになく、そうなると天王星、海王星あたりから持ってこなければならないが、時間がかかる…みたいなことをマジメに論議しているという『未来宇宙技術講義』シュミット&ズブリン編は、紹介されていた本の中で一番読みたかったけど、版元の三田出版会が潰れたためにどこにも置いていない。京セラあたりが出してくれないでしょうか。

 大航海時代は大伝道時代であり、それは世界の終末が近づいているという計算が流行っていたからだ、という『恐怖心の歴史』ジャン・ドリュモーの記述を読んで、気にかかっていた『街道をゆく11 肥前の諸街道』司馬遼太郎の《日本人は座して西洋文明を迎えるのだが、西洋側がこれだけ大きな犠牲を払ったことは、アジアと西洋ということを考えあわせて、多少の感慨をもたざるをえない》という部分が、少しわかったような気がしました。なんで万里の波濤を超えてきたかというと、キリストの福音は終末までに全世界に述べ伝えられなければならい、という恐怖心に駆り立てられた伝道熱があったからなんじゃないか、と。

 アメリカの大学では文系でもバイオの基礎知識が求められており、『細胞の分子生物学』ぐらいは手元に置いておくべきだ、というんですが、どうなんでしょうか。紹介されていたのは第3版ですが、日本でも4版が出ています。『Essential細胞生物学』も第2版が出ていますね。

 『神代地誌』ディオドロスもいつか読んでみたい。

 そうですか、白川静の『字訓』『字通』はまだしも『字統』ぐらいは持ってないとモノ書きとしてはダメですか。持っててよかった。

 フレーゲ著作集もいつか読んでみたい。

 フリーマン・ダイソンの本は読まず嫌いしていたかな…。

 カトリック教会は、良くも悪くも世の中のあらゆる善と悪を引き受けてきたというか、現実と向き合って裁いてきた唯一の歴史ある組織だと思います。だから間違いもやってきたけど逃げなかったし、マルクスも『資本論』第3巻で、プロテスタントはカトリックから解放されないと書いているのですが、まあ、そんなことはおいといて、平凡社の祈念碑的なシリーズ『中世思想原点集成』出版の最後を飾る「近世のスコラ学」で論議されている、日本に布教にきた神父たちによる、日本の風習がどこまで認められるかという部分だけでもいつか読んでみたい。

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