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June 28, 2009

『日本軍の小失敗の研究』

Nihongun_shippai

『日本軍の小失敗の研究 現代に生かせる太平洋戦争の教訓』三野正洋、光人社NF文庫

 立花隆さんの書評で読もうと思った本。太平洋戦争に関しては、対中戦争に深入りしすぎて、さらに国力を考えずに対米戦争を妄想した時点で自我が肥大しすぎていてアウトとも言えますが、その前に、もうちょっと国内でもちゃんと戦争の体制をつくっておけよ、と思わず旧軍に対して文句を言いたくなるのがこの本。

 立花さんが紹介していたのは、戦闘機工場に飛行場が併設されておらず、遠い飛行場まで牛車で運び、物資統制がつよまると、工場側が強制的に徴用した牛が問題になって裁判まで発展したという頭がクラクラしそうなというか形而上学的ともいえるような問題ですが、そんなのがてんこ盛り(p.153-)。
 
 ドイツもそうですが、日本軍も武器の種類だけ多くて互換性がないことが問題でした。例えば軍用機に搭載する火器ですが、アメリカは事実上12.7ミリに統一されていたのに、日本ではゼロ戦だけでも口径3種類、弾種4~5種類を用意しければならなかったとのこと(p.42)。これじゃ、補給、整備する者の負担は限りなく大きくなりますよね。
 
 航空機でも陸軍、海軍のアホな対立が目白押し。海軍の開発した零戦で統一すればいいものを、ほぼ似たような仕様の隼をつくってしまう陸軍。しかも開発は遅れに遅れ《陸軍は(わずかに)隼四〇機で、対英、対米戦争に突っ走った》(p.51)とのこと。

 さらに空冷式のエンジンに限界を感じてドイツに水冷式のエンジン供給を受けるのですが、これが空軍、海軍とも独自にライセンス料を支払うというアホさ加減。このあまりにも意志の疎通のなさにはドイツも憂慮したというのは笑うに笑えません。さらに世界広しといえども、陸軍が潜水艦と航空母艦をつくったのは旧帝国陸軍だけだそうです(p.117-)。潜水艦は海軍の中でも特殊な部門。陸軍が製造した潜水艦は三隻とも沈没、搭乗員全員死亡という悲惨な結果となったそうです。まあ、海軍も巨大潜水艦に固執して、使い勝手のいい中型潜水艦の製造に支障をきたしたというアホなことをやっているのですが…。

 米軍、旧ソ連軍のように、これは…という戦車、潜水艦のタイプが決まったら、それをつくりまくるという戦略しかないのでしょうね。あと、英国では商船にいつでも大砲をつけられるように法律で取り付け部分を強化した設計にするよう決めていたそうです(p.140)。

 ぼくもそうですが、日本人というのは粘り強いと思われますが、長い忍耐をするような探求、計画に沿った行動というのは苦手だと思います。

 あと、米軍は第一次世界大戦の経験を通じて《戦争とはある意味で土木工事である》と考えるようになった、ということです。さすがというか…。工兵というのは平時であっても、これ以上役立つ兵科はない、といわれるのに日本軍は冷遇されていたというのは、情けないといますか、筆者によると現在でもその状況はあまり変わっていないそうです。PKOなどの経験を通じて、変わってきていると思いたいのですが…。

 1940年、海軍が登場させた零戦のデビュー戦で、敵機27機を13機で全機撃墜したというのは、91年の湾岸戦争まで破られることのないパーフェクトレコードだったそうですが、そうした栄光もあるんですがね…(p.176)。

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