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May 28, 2009

『精神科医がものを書くとき』

Nkai_seshinka

『精神科医がものを書くとき』中井久夫、ちくま学芸文庫

 絶版となっていた『精神科医がものを書くとき 1-2』広英社のうち、精神医学を扱ったほぼ半分の原稿が文庫化されました。

 医療関係者を相手にした講演や、ミニコミ誌から取られてるものが多く、最近の本よりも、ずいぶん思い切ったことを書いているな、という印象を受けます。

 《躁うつ病者は、自己価値感情が株価のように乱高下しています》(p.137)というのはなるほどな、と。第二次大戦で日本の精神病患者の半数は栄養失調プラス結核で亡くなり、ドイツは餓死者こそ1/4だったが5万人を安楽死させている、なんてのもすごい話だな、と(p.173)。

 第二次大戦中に梅毒患者をマラリアに罹患させ、熱に弱いスピロヘータ・パリーダを殺すマラリア療法が生み出され、精神科でもっとも悲惨だった第四期梅毒がなくなって病院は清潔になったとか、抗精神薬は心臓を停止する時間を長引かせるための交感神経、副交感神経の両方を遮断する麻酔科の薬だった(p.175-)というあたりも、なるほどな、と。

自我というものまとまりがある程度のダメージを受けたとします。その原因が脳炎であろうが、何であろうが、ダメージを受けたために普通の対人関係ではやり通せないような人には精神科の固有のテクニックが必要である(p.185)

 という言い方も素晴らしいと思います。

 クラスメートとか職場の同僚とかの大きさの人数が人間にとって一番処理しにくく、日本人で一番、対人恐怖症が発生するのもこの規模の人たちに対してだそうです。さらにネズミでも一つの檻に7-8匹ぐらいだとうまくやっていけますが、それ以上、30数匹まで増やすとネズミは痩せていくなんても、初めて聞きました。この7-8人~30数人という中間的な数の人間関係は、個体としても集団としても対応できないから、人間関係が扱いにくい、と(だからネズミも30数匹以上だと集団一本槍の対応でいけるので太り始めるそうです、p.206)

 「人格は対人関係の数だけある」というサリヴァンの言葉も初めて知ってうなりました(p.84)

 文庫化に当たっての誤植なんでしょうが、p.165の《高齢のせんせいです》というのは次には直してほしいところ。

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