『さよなら、愛しい人』
『さよなら、愛しい人』レイモンド・チャンドラー、村上春樹訳、早川書房
村上春樹さんのチャンドラー翻訳シリーズの第二弾。
もちろん清水俊二訳『さらば愛しき女よ』を読んだ人にもお勧めします。
なにしろ長い。
文庫の清水版とハードカバーの本書がほぼ同じページ数。
『ロング・グッドバイ』の時も驚いたけど、『さよなら、愛しい人』でも、前は省略されていたのを読んで感動していたんだ…という気持ちになりましたけど、今回はどちらかというと「清水さんが省略したくなるのもわかるわな」と思いました。
というのも、マーロウが行動を起こすたびに、細かな人物、風景描写が必ず付くんです。
それによって物語の流れがプッツン、プッツン途切れてしまう。
どっちの読書体験の方が、より物語に入り込めるかといわれれば、清水訳の『さらば愛しき女よ』でしょうかね(タイトルもさすが映画屋さんだけあって清水さんの方がいいし…というか日本の翻訳小説全体の中でも『さらば愛しき女よ』は素晴らしいタイトルに入るでしょ)。
村上さんも訳者あとがきで《「ここまでややこしく書かなくてもいいだろうに」とついつい愚痴も言いたくなる》と書いていますが、とにかく村上訳で初めて全貌が見えたチャンドラーの作品の細かな描写には驚かされます。
ひょっとして学生の頃、大好きだったロス・マクドナルドのリュー・アーチャーものも、こんな感じの抄訳だったのかな…なんて思いはじめていて、アーチャーものが好きだと書いていた沢木耕太郎さんあたりが訳してくれないかな、なんて思ったりします。
ということで、大好きだった"The Goodbye Look" Ross Macdonald(邦題は『別れの顔』)を購入w
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