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April 03, 2009

『自衛隊が危ない』

Sda_sugiyama

『自衛隊が危ない』杉山隆男、小学館新書

 『メディアの興亡』で華々しくデビューした後は『兵士に聞け』『兵士を見よ』『兵士を追え』『兵士に告ぐ』など自衛隊員に密着したレポートの多い杉山隆男さんが、人事関係施策等検討会議委員をつとめた経験などを踏まえ、庁から省に昇格して意気あがる防衛省というか自衛隊の問題点を5つの視点でとらえているのが本書。

 第一章から第五章と章立てにはなってるし、初出が書いていないので書き下ろしなのかもしれないけど、いきなり田母神論文から始めているので、サピオあたりに連載していたのを集めたのかもしれませんが、わかりません(あの手の雑誌は興味ないし、マトモに読んだこともないのでw)。

 とにかく各章は以下の通り。

第一章 「武士」は消えたのか
第二章 軍歌が流れる基地
第三章 護憲の軍隊
第四章 悩める現場
第五章 アメリカという聖域

 それぞれなかなか読ませてくれましたが、もちろん、こうした大きな問題なので、全面的に賛成とはいえません。個人的に持っている情報も乏しいですしね。ということですが、感想をつらつら重ねていきますと…。

 第一章は懸賞論文で頸にされた田母神・前航空幕僚長との雑誌対談を元にした話。杉山さんの視点は独特で、田母神問題で一番気になったのは《航空自衛隊という一軍を率いる指揮官の口から、言論や表現の自由という言葉が語られたことそれ自体に、口の中に砂が混じったような違和感を覚えた》(p.23)ということ。

 そのことを本人を前に対談で問いただしたら《制服を着ていたら全く言論の自由がない? そりゃあなた、差別じゃないか。おかしいですよ》(p.25)とまで言われたそうです。差別という言葉は、本来虐げられている者が放つものであり、こうした言葉を4万5000人の航空自衛隊を統べるトップから聞いた杉山さんは《あっけにとられた》と書いています。

 ぼくが思い出したのはオウム。彼らはことあるたびに「信教の自由」「布教の自由」を口にしていましたが、誰が語っていたのか忘れましたが「イエスや仏陀が信教の自由を掲げて布教したかっつうの」という気持になりました。それと同じような感想を持ちましたね。

 杉山さんは、解任される前に、浜田靖一防衛大臣から辞表を書くように迫られて拒んだことを最も問題にしています。《軍を支える最大の掟、上意下達に背いたことにならないだろうか》《命令が正しいのかどうか、部下がいちいち判断して、従うかどうかを決めるような組織なら、それはもう軍隊とは言えないはずである》(p.50-51)と。

 ここから杉山さんは昔のことを思い出します。学生運動の激しかった時代、制服を着て授業を受けようとした自衛隊員が運動家に校門で追い返されるようなことがありましたが、杉山さんはそうした扱いに黙って耐えた自衛隊員には「刀を帯びている者の克己」があったのではないか、というんですね。《ただじっとこらえる道を隊員たちに選ばせたのは、実は彼の矜りだったように私には思えてならない》(p.40)。こうした自衛隊員が多かったからこそ、杉山さんはF15にも乗り、レンジャー訓練にも付き合ったりしたわけですが、いまや、田母神前幕僚長だけでなく、何かというと「訴えますよ」という隊員が多くなったといいます(p.56)。まあ、田母神前幕僚長も、そうした時代を反映しているというか、そうした流れの中での自己主張なのかもしれませんが、論文のお粗末な内容とともに、ぼく個人としても寂しさを感じざるをえません(そういえば謀略史観を前面に押し出しているアホさ加減もオウムと似ているなw)。

 自衛隊が初めてPKOに参加した頃、隊員たちはカンボジアの炎天下、タオルを頭に巻き付けて作業をこなし、地元の子どもたちとも戯れていた姿を宮嶋茂樹さんなんかは撮っていました。しかし、イラクに派遣された自衛隊員は、米軍の特殊部隊みたいなカッコ良さというか、洗練されてきて驚いたことがあります。ということからか第五章「アメリカという聖域」では「国民の生命と財産を守るだけなら、警察官と変わらない」「自衛隊にはもっと大きな任務があるのだ」と語り、国際的な安全保障のためにアメリカと連携しながらどんどん部隊を派遣しなければならないというような一佐との会話も収録してされています。

 もちろん新書一冊で結論が出るような話ではありませんが、こうしたところまで来ているんだ、ということを知るのは大切だと感じています。

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