『宮本常一の写真に読む失われた昭和』
『宮本常一の写真に読む失われた昭和』佐野眞一、平凡社
これも旅先でパラパラとめくっていた本です。
宮本常一さんは日本全国をくまなく歩いた人ですが、戦前はコダックのベスト版や、ウエルターのブローニー版を使って村々を撮影。戦後は世の中が安定しはじめた1960年からオリンパスペンSで撮影を再び開始したそうです。
この本に収められているのはほとんどが消失した戦前の写真を除く、オリンパスペンSで撮った1960年から1970年までの写真(最後は大阪万博)。
なるほどな、と思ったのは宮本さんが洗濯物をよく撮っていること。干されている洗濯物をみると、粗末な着物をつぎはぎだらけにしながらも着ていた時代から、ほとんどが既製品になっていく変遷があっという間だったということがわかります。
網野善彦さんは、この時代に関して、中世からの地続きだった庶民の生活が根本的に変わった大変動期だったとしていますが、40~50年前の姿とはとても思えない日本の姿がそこにはあります。
カスリとモンペ姿で手ぬぐいを姉さんかぶりした農婦が、背中には大きな荷物を背負って歩いているなんて姿は、今はみつけることが難しいでしょう。
個人的に印象に残ったのは、牛を追いながら、自らも背負子を背負って歩いている農婦の姿です(p.57)。
あと、オリンパスペンSというのは本当によく写るカメラだったんだな、と改めて感じました。
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