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February 16, 2009

『漱石詩注』

Souseki_kanshi

『漱石詩注』吉川幸次郎、岩波文庫

 夏目漱石の漢詩は、死後、岩波版の全集が刊行されてから集められたそうでして、現代日本語の基礎をつくったその小説と比べて、顧みられることは少ないと思います。

 ぼく自身、漱石が漢詩をつくっているということは知っていましたし、『虞美人草』などを読んでも、普段の生活ではまったく出会うことのないような意味不明な漢字が数多く出てくるところなど、漢文に対する知識の量の違いに対して、畏怖に似た感情を持っていました。

 ぼくは本当に漢文、漢詩、漢字の知識が足りません。

 その意識は前からあったのですが、今回、さらにそれを痛感したのが『佩文韻府』など中国の辞書を知らなかったこと。

 いや、無知とは恐ろしいものです。

 それを恐ろしいと思わないと、戦前の軍人のようななんちゃって漢詩を書いて恥じないようになってしまうのかな、と。

 平仄を整え、中国の詩語で構成しないと漢詩にはならないわけです。

 しかし、いまのぼくなどよりも100億倍ほども勉強していたであろう漱石先生でさえ、時には平仄を整えられなかったりするものも散見されるというのは、なんと恐ろしいことでしょうか。

 ざっと、旅のあいだ中、この本を読んでいて、やはりいいのは、大量吐血した修善寺での出来事の後に書かれた五言絶句の一群と、死の直前、それでも『明暗』を書き続けていた時に並行して残された七言律詩の連作です。

 古井由吉さんも取り上げている詩ですが、死の直前に詠まれた七言律詩の一節

 夢散蓮華拝我回
 夢に蓮華を散じ我を拝して回(かえ)る

 なんていう詠いっぷりはすごいな、と思います。まさに絶唱。

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