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February 01, 2009

『團十郎と歌右衛門』

Danjuro_and_utaemon

『十一世團十郎と六代目歌右衛門 悲劇の「神」と孤高の「女帝」』中川右介、幻冬舎新書

 楽しみだけの読書というのは必要だと思いますが、そういった意味で個人的には、かなり高得点。

 もうこの世にいない昭和の名優ふたりに関する評伝というのが、よく発売されたというか、幻冬舎の編集はなかなかやるな、という感じも受けました。

 中川右介さんは、田中長徳さんの個人マガジン『カメラジャーナル』をずっと出していたアルファベータの社長というイメージだったけど、こんなのも出しているんだな、と思いました。

 この本をひと言でいうと、稀代の女形、中村歌右衛門の芸の充実と表裏一体となった歌舞伎界での権力闘争の歴史と、役者バカであった十一世團十郎がそれに破れ、胃癌によって早世するまでの軌跡を参考資料とともに丁寧に描いた作品ということでしょうか。カラヤンとも比較して《多くの役者は「女」や「酒」を芸の肥やしとしているようだが、世の中には権力闘争を芸の肥やしとする人もいる。歌右衛門とカラヤンはまさにそういうタイプの人だったに違いない。そして世の中には権力闘争に勝利した者だけにしか実現できない芸術も存在するのだ》(p.356)みたいな。

 それにしても、歌右衛門と十一世團十郎のふたりは、若い時代にはドシヤ振りの雨の中を二人でひとつの傘をさして歩いたり、釣りに出かけたり、ほとんどカップルのようなこともあった感じ。しかも、團十郎も片岡我童(当時は芦燕、死後に十四世片岡仁左衛門を追贈)と「ラブラブの時代」があったそうですが(by現在の十二世團十郎)、市川宗家との養子縁組が決まると二人は別れさせられたそうです(p.41-42)。歌右衛門さんに至っては五代目歌右衛門の養子であり(兄であり早世した福助の17歳の時の子どもという説も)、守田勘弥に失恋し(勘弥が水谷八重子と結婚)、その痛手をなぐさめられた男衆と北海道に駆け落ちしたり、初代吉右衛門に老いらくの恋をさせてしまったりと、まあ、素晴らしいw

 あまり多くの方々の注目は集めないかもしれませんが、歌舞伎好きの方にはお勧めしておきます。

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