「吉本隆明語る」
昨日、NHK教育テレビで「吉本隆明語る」を観ました。
テレビで吉本さん見るのは、「電波少年」で松本明子が、伊豆の海で溺れた吉本さんの水泳恐怖症を治すとかいう目的でアポ無し自宅突入して以来じゃないかな…。あの時は、洗面器に顔突っ込まれて、目を開けていた姿が素晴らしかった。
今回は吉本さんが、これまでの仕事を一つにつなぐ話をしてみたいと考え、糸井重里さんに協力をあおいで講演会を開いた時の模様を中心としたドキュメンタリー。
吉本さんの本は熱心な読者のつもりだったけど、お兄さんが戦死していたのは初めて知ったな…。赤坂憲雄さんと対談した『天皇制の基層』作品社、1990で、天皇制の制度論と個人論を分離しなければならないという赤坂さんに対して、天皇は統帥権を持っていたのだから間違いなく戦争責任があるということと《それからもうひとつ、「現人神だと考えなければ命を的にできない」といって行動し、かつ生きたり死んだりした多数の民衆がいるわけです。そういう人には、天皇個人の神聖は、体験上、捨象できない》(p.46-47)とキレ気味に語っていた背景のひとつが浮かび上がってきた感じがします。
弟さんのことについては高村光太郎の「死ねば死にきり、自然は水際立っている」という言葉に寄せて「もし自分が死んだら、適当に寺でお葬式をあげてくれるだろう。死ねば死にきり。死んでしまったら、自分でどういうお葬式を出してくれとかいっても仕方ない」とか語っていたのを覚えているんですが、お兄さんのことは、不覚にも思い出せませんでした。
最近の著作といいますか、聞き語りの本で、引きこもって自分と向き合えみたいなことを力説していたのが、言語というのはコミュニケーションの道具として生まれたのでなく自己表出として生まれたハズだというあたりの話につながっていくのか、とも思いました。
『言語にとって美とは何か』の中で、言語の発生というのは、例えば海を見ていた原始人が「うー!」と叫んだみたいなものではないのか、というあたりや、日本語では助詞が一番、自己表出の度合いが高いというあたりも、改めて「吉本さんにとっては重要な指摘だったんだろうな」と思いました。
芸術的言語における自己表出の優位性から古典経済学といいますかマルクスの労働価値説を批判する語り口も聴いたのは初めてのような気がします。
最後に芸術は無価値だと言い切るところが東洋的というか、自己表出の優位性に関してもニーチェみたいな人なら《価値は、人間が自分に同化しうる最高の力量である》みたいなことを言ってから、哲学の課題は価値の転換だとか言うと思うのにな、とか感じました。
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