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October 28, 2008

『ヨハネ福音書のイエス』

John_kobayashi

『ヨハネ福音書のイエス』小林稔、岩波書店

 岩波版の聖書(いわゆる荒井ゼミ聖書)の中で、衝撃的だったヨハネを訳した小林さんの論文集。

 大病したらしく、死を覚悟した時に、人生で一番楽しかった時は岩波版のヨハネを訳していた時だった、とまえがきで書いているのが印象的。「自分の場合って、楽しかった時期っていつなんだろ…」と考えさせられたりもしました。

 内容に関しては、初学者でも簡単に読めるといいますか、様々なところで書かれた論文を集めただけではありますが、重複もなく、ある程度、ヨハネに関してはまとまった知識を得られると思います。小林先生はイエズス会の神父ですが、内容はまったく抹香臭くないので、聖書に関してはいろいろ知的好奇心はあるけど宗教っぽいのが嫌いな方にもお勧めできるのではないでしょうか。

 マタイ、ルカは基本的にマルコ+Q資料(語録福音書)で再構成されたという話は、少しでも聖書学を勉強すれば出てくる話ですが、ヨハネに関してもごく当たり前に元資料、第一編集者、最終編集者の3人が想定できるという話が当たり前になればいいと思います。

 あと、改めて思ったのがRaymond E.Brown師の共同体論がヨハネの基礎になっているんだろうな、ということ。ヨハネ福音書を生んだ共同体は素性不明の「愛された弟子」を中心とした組織などないような"フリーな教団"だったのでしょうが、後から付け加えられた21章では、羊がペトロに委ねられているように、権威を持たないために内部分裂を起してしまったということが3本の手紙から読み取れるわけですが、『禁じられた福音書―ナグ・ハマディ文書の解明』エレーヌ・ペイゲルス、2005なんかの《『ヨハネによる福音書』を新約聖書の中に編入し、『トマス』を『異端』として駆逐する人々こそが、後の西欧キリスト教を決定的に形作りーそして不可避的に限定することになったのである》(p.38)ということも思い出しました。

 久々にこの手の本を読んでみて、いろいろ調べてみたんですが、Joseph A. Fitzmyer師が1コリなんかもAnchor Yale Bibleシリーズで出しているのを知って、老いてますます盛んだな…と思いました。まあ、パウロ書簡なんて今さら読みたいとも思わないので買いませんが、それにしてもAnchor Bibleからシリーズ名が変更されたんでしょうかねw

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