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September 04, 2008

『人間が幸福になる経済とは何か』

Roaring_nineties_2

『人間が幸福になる経済とは何か』ジョセフ・E・スティグリッツ、鈴木主税(訳)、徳間書店

 個人的には情報の非対象が存在するところに利益が生まれると思います。

 しかし、こうした情報の非対称性(スティグリッツ教授の専門)が1)先進国と後進国2)機関投資家と個人投資家3)富裕層とワーキングプアなど大規模に拡大され、しかもフィックスされてしまうと暴力的に解決されるしかなくなり、社会は不安定さを増して、成長も阻害されるというのが、最近のスティグリッツ教授の主張。

 グローバリズムに対して、エスタブリッシュメントの側から厳しい批判を行ってきたスティグリッツ教授のこの本は、Roaring Twentiesになぞらえられた原題"Roaring Nineties"の題名通り、90年代に起こったエンロンやワールドコムの破綻について、情報を持っている者が持たざる者を騙したことにつきる、という単純明快なことを解き明かしています。そして、こうした事態がおきるから過度の規制緩和は問題なのであって、政府の果たすべき役割というのはちゃんとある、ということを説得してます。

 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店)では《短期的にどんな逆風が生じたとしても、それは改革にともなう必要な「痛み」なのだとされた。金利が高騰すれば、いまは飢餓を呼ぶかもしれないが、市場効率には自由市場が必要なのだから、最終的には効率が成長を呼び、成長が全員を幸せにする。苦しみや痛みは、いわば償却課程の一環であり、むしろ国が正しい方向に進んでいることの証拠だというのである。私に言わせれば、たしかに場合によっては痛みも必要だが、痛み自体は善ではない。よく考えられた政策によるならば、往々にして多くの痛みを避けることができる》(pp.62-63)と書いていましたが、今やGDP(国内総生産)さえ伸びていけば最終的には誰もが恩恵にあずかれるという「トリクルダウン理論」を信じる人は少なくなったと思います。しかし、基本的に知識の差があまり存在しない発展途上国の非熟練労働者と先進国の非熟練労働者が競合するようになって、先進国では賃金が相対的に下がるというロジックは確立されたと思います。

 一方で、機関投資家は株式、債券、デリバティブという多種多様な金融取引を効率的に処理するために、社内に情報スーパーハイウェイを確立し、情報へのアクセス能力をますます高めています。個人投資家は対抗できません。

 こうした事態への処方箋としてスティグリッツ教授はあげているのは《金融部門にたいする適切な規制や競争の促進や環境保護の手を打たず、基本的なセーフティネットを提供しないと、経済は悪化するのである》(p.384)というごく一般的なビジョンです。あとは貧しい者に思いを致すこと。少し具体的なものとしては、先進国の知的財産権に制限を加えて、ジェネリック医薬品を後進国でもつくれるようにすることぐらいでしょうか。

 ちょっと弱いかもしれませんが、所詮はこの程度の当たり前のことをやるしかないのかもしれません。

 閑話休題ですが、日本の次の総選挙では民主党が勝つんでしょうかね。

 自公連立政権よりはいいかもしれませんが、なんか揺り戻しで一方のポピュリズムが幅をきかすだけになるかもしれないとも感じます。でも、『官僚は何を最大化するのだろうか。一つの答えは、「官僚は自分の属する省庁のサイズを最大化しようと努める」である』という「スティグリッツの法則」だけは打ち破られそうかな…。

 まとまりませんが…。

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