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September 21, 2008

『「私はうつ」と言いたがる人たち』

Utsu_rica

『「私はうつ」と言いたがる人たち』香山リカ、PHP新書

 香山リカさんを嫌う人たちは少なくないんですが、妙に問題意識が重なるし、個人的には大好き。「ぷちナショ」とか「イヌネコにしか心を開けない人たち」とか言われると、あまりにも痛いところを突かれた気がして反発するんじゃないかと思うのですが、今回の本もそんな感じで受けとる人は少なくないんじゃないですね。とりあえず、小生は香山さんの味方です。

 今回もチャレンジな内容。タイトルからして現役の臨床医としては思い切ったものだと思うし、《「ガンバレと口にするのはとにかくタブー」と言葉を選んだりする必要もないのである》(p.192)というのも、この手の本では初めて読みました。

 この本は「うつ」を詐病としているような人たちを批判することが目的というよりも、誰もが「うつ」と言い出すことによって、責任感が強いゆえにかえって発病しやすいという典型的な日本人タイプの患者を守ることもでなくなってしまうのではないかという危機感から書かざるを得なくなったというように感じます。

 「うつ」病が増えている最大の原因は「現代人が悩めなくなった」ことにある、という指摘も新鮮(p.195)。

 「悩みを悩みとして抱えることができずに、すぐに気持ちの落ち込み、体のだるさ、といった症状に変えてしまう」ひとになる。親の子の悩み、恋愛の悩み、社会に対する悩み、そして生や死、存在の悩み。人生に悩みはつきもののはずだが、いまの人たちはそれらにじっくり向き合い、葛藤し煩悶し、文学や哲学、宗教、人生の先輩などに答えを求めてさまようという、といったことがとても苦手だ。  それよりも、「あ、これってうつ病かも。つまり脳の中のセロトニン不足ね」と考えてSSRIを飲んだり、短期の認知行動療法のプログラムに参加したほうがよほど効果的だし、おかしな言い方だが〝気がラク〟だ。  中略  「あれこれ悩む前にまず抗うつ剤」がほんとうに二十一世紀の人間モデルとしてふさわしいものなのかどうか、もう一度考えてみたほうがよいだろう。
 という「あとがき」も、よく書けていると思います。

 香山さんの本は時事的なネタから入っていくものが多いのですが、今回は安倍元首相の辞任と朝青龍問題から入っていきます。そしてなんでもすぐ〝心の問題〟として語ろうとする傾向は間違っているのではないかとして《だれもが、「私って、うつ病」「ストレスでプッツンしちゃって」と気軽に口にできる〝一億総うつ病の時代〟を、ほんとうに「心の問題への理解が広まった」と喜ぶことができるのだろうか》(p.26)と疑問を呈します。

 また、自身の臨床事例などから、大手企業の社員や公務員の中には「うつ」病と診断されると、リハビリとして海外留学や冒険探検なども視野に入ってくる人も増えてきており、うつのリハビリを「これまでやりたくてやれなかったことにチャレンジする期間」と考える風潮もあるといいます。こうした事態が進めば、医者も上司もリハビリを《湯治、遍路、寺での座禅の三つのなかから選んでください》とあらかじめプランを示さなくてはならないかもしれないとまで書いています(p.42)。

 個人的な実感しとても、こうした「うつ病セレブ」の尻ぬぐいをさせられているような社会人も多いと思いますし、今後、議論を呼ぶんじゃないかと思います。

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