『食の位置づけ そのはじまり』
『食の位置づけ そのはじまり』辰巳芳子、東京書籍
これまで辰巳芳子さんは、ものすごく尊敬していましたが、この本で、心の中の評価が少し下がりました。理由は3つ。
福岡伸一さんが『もう牛を食べても安心か』や『生物と無生物のあいだ』で再評価し、紹介しているドイツの生化学者シェーンハイマー(Schoenheimer, 1898-1941)の"動的均衡"理論にあまりにも傾倒しすぎているというか、一目惚れ状態で、にわか評論家のようにその理論を自分の領域に引きつけて、展開しようとしている点。なんか新興宗教にイカれてしまっているような雰囲気も感じられて、痛々しいです。
もうひとつは、カトリックの信者であるということを前面的に押し出している点。辰巳さんは、これまでの著書でクリスチャンであることは言葉少なに語ってきましたが、あまり大っぴらにカトリックであることは宣言していませんでした。それなのに今回は若手の神父相手に「食の霊性」とかをテーマに語らっちゃうというのは、いかがなものかと。
それと原発批判。チェルノブイリで汚染された草を食べる牛は放射能が濃縮された牛乳を出すみたいな話と、六ヶ所村の再処理工場から出る放射能がやがて生物的な食物連鎖の中で濃縮される…という作り話はデマゴギーとしかいいようがありません。
あまり理論とか語らず、料理を愛する者たちにつくれよ、と世の女性たちに静かに教えていた辰巳さんが好きだった小生としては、ちょっとがっかりです。
でも、まあ、好きなところはあるので、これからも読みますが、正直どうしちゃったのかな…という思いは消えません。
これまでは本当に好きな辰巳さんだけに、いい文章とかいっぱいあるんですがね…。〝いのちのスープ〟が末期の患者にそれまで困難だった自然なお通じを促すとか、こうしたスープを家族がつくりつづけることが一緒に病と闘うことなんだとか。
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