『自民党政治の終わり』
『自民党政治の終わり』野中尚人、ちくま新書
なんともタイミングのいい書名が自民党総裁選挙のさなかに出たものんだなぁ、という印象。日々、日本の政治をウォッチしていれば、特に目新しい情報を得られるというわけではないが、それでも、田中角栄が完成させた自民党政治のシステムを秘蔵っ子の小沢一郎がまず風穴を開け、旧田中派が弱まった自民党の中で相対的に最大派閥となった旧福田派の中から出てきた小泉純一郎が最終的にぶっ壊してしまったという流れは整理してくれます。
しかし、今はこんな風に冷静に書いてはいるけど、正直、郵政選挙の後は「どうなってしまったんだ」と思って、岸信介から福田赳夫という清和会の流れをおさらいしたことを懐かしく思い出してしまいます。
今回、改めて思うのは、小沢一郎さんが《かなり早い段階から総統に抜本的な政治改革を唱え続けたことである。そしてそれを実行に移した》(p.30)ということ。1980年の『人間小沢佐重喜』の中で《小選挙区制と比例代表制を併用する構想、ならびに政治資金の公営化のために政党法の制定を提唱している》というんですな。
まあ、同じようなことを提唱した政治家はいるかもしれませんが、小沢さんの場合、いくら冷戦終結という大情勢の変化があったにしても、権力の中枢にいながら、あえて、自民党を割ってでも政権交代を実現したわけですから、大したもんです。金丸信さんはすっかり晩節を汚した形で終わってしまいましたが、「自民党を割って社会党と新党をつくる」ということも言っていたそうで、この二人が1980年代後半から90年代前半に何を考えていたのか、いつか誰かが明らかにしてほしいです。
あと、整理してもらったな、と思うのは中選挙区制という選挙制度は《保守自民党に複数の派閥を生み、革新野党に複数の政党を生んできた》(p.206)というあたり。
また、自民党の中での当選回数に基づく年功序列システムは《当選六回まで、年数にすれば一五~二〇年ほどは基本的に横並びの傾向が大きいものの、その後は差別化が激しくなる》として、政調の小委員会などを通じて政策を学ぶなどして《長い期間にわたって鍛えるプロセスが用意されていた。こうした競争の中からリーダーが選別されてきた》と。そしてこうした仕組みによって《一定の指導者育成が行われてきた》(p.129-132)わけですが、当然、影の部分もある、と。それはこうした鍛錬のシステムを卒業する時点で、二世議員は40歳代なのに対し、たたき上げの議員では70歳代にもなってしまい、あまりにも不利だという点。
著者の野中さんは、こうした問題点はこれからも続くだろうとして、ひとつの提案して県会議員が身分を保ったまま国政にうって出られたり、公務員が選挙に立候補しても復職できるように公職選挙法を改正すべきだと提案していて、それはそれなりに面白いな、と思いました(p.173-)。そうなれば、政治家になるリスクはかなり低減され、競争が生まれてきます。
とにかく、著者がp.204以降に語っているように、バブル崩壊で高度成長が終わりを告げ、少子高齢化社会が立ち現れた結果、補助金などを通じて財政資金をバラ撒くことによって一億総中流化を実現した手法はとれないことだけは明らかなわけで、これからどうしたらいいんですかねぇ。
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