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August 14, 2008

『「昭和」を点検する』

Showashi_tenken

『「昭和」を点検する』保阪正康、半藤一利、講談社現代新書

毎年、この時期にはアジア・太平洋戦争の"失敗の本質"を探るような本を一冊は読むことにしているのですが、今年はこれ。在野の昭和史研究家ふたりが「世界の大勢」「この際だから」「ウチはウチ」「それはお前の仕事だろう」「しかたなかった」という"ありふれた日本語"をキーワードに、今も昔も変わらぬ官僚組織が、それぞれの自己保身をはかる中で、集団でのコントロールを失って、将棋倒しのような形で日米開戦に至り、日本という国を破滅寸前まで追い込んだ流れを明らかにします。

 個々の論議は読んでのお楽しみということにしたいと思いますが、統制派と皇道派の分裂のキッカケが、「バーデン・バーデンの密約」の時に同じような「高度国防国家」の建設を誓った永田鉄山と、対ソ戦一本槍の小畑敏四郎の対立だったというあたりは「こういう見方もあるんだな」という印象です。五ヵ年計画なども取り入れて段階を踏んで国力を増していこうという永田の構想に対して、そんなのは「共産主義こそ世界の大勢と信じる輩と同じ」とみた作戦の鬼・小畑が対立し、やがてソ連の軍事力が高まる前にソ連を叩こうという小畑らの「予防戦争論」と、まずは蒋介石を叩いてからという永田らの「対支一撃論」の激突に至る、と。その中で永田は昭和10年に暗殺され、翌年の2.26事件の粛正で皇道派は一掃され、やがて生き残った東條英機が実権を握るというパターン。これって、官僚組織の中で、最も失点がすくなかった人間が次官になるという今の官僚機構と同じような感じがします。

 また、ノモンハン事件に関してソ連はドイツと事を構える前に「いまのうちにちょっと実力のほどを見せつけて日本をビビらせておこう」(p54-)ということで最新兵器をくり出してきた、というあたりの話もわかりやすい。

 また、日本は中国には負けていないというかずっと勝っていたという認識に対して、中国側は日本帝国主義を打ち負かしたという意識の齟齬が今の日中間には存在していますが、中国側からすれば《中国に攻め込んだ国がどういうふうにつぶれていくかというのは歴史のなかでぜんぶ証明されているのに、そして私たちはその戦略をもっているのに、日本軍はそのとおりに入ってきた。あなたたちは、南京から重慶、成都へと日本軍が得々と侵略して入っていったというでしょう? 違いますよ。あれは私たちがずうっと引きずっていったんですよ。引きずって引きずって、そして補給が絶えたときに敵は自然に崩壊するというような作戦だったんですよ》(p.125)という蒋介石の次男、蒋緯国(実は日本人の血が半分入っている)から聞いたという話は印象的。まあ、話半分に聞いても、こういう言い分はあるんだろうな、という感じです。「中国に攻め込んだ国がどういうふうにつぶれていくかというのは歴史のなかでぜんぶ証明されている」とは個人的には思っていませんが、米軍は絶対に中国には攻め込まないという戦略を持っているという伝説も含めて、これも話半分には聞いておかなければならないかな、と。

 また、明治以降、賠償金を獲得することで戦争資金を得てきた、というあたりや、海軍は予算を確保するために日独伊三国同盟に賛成したあたりも面白かったですかね。

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