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August 08, 2008

ハイデガー『ニーチェ』#11

ει δυο μοναs ποιησειε,παλιν αν μια αναφανειη ηs εκειναι αν αυ αμφοτεραι το ειδοs εχοιεν,και ειη αν ο εστιν κλινη εκεινη αλλ ουχ αι δυο.

 ここは分ったようでよく分らない部分ですね。

 使われている単語は簡単なものばかりですが。

 藤沢訳は《もし神が二つだけでもお作りになるとするならば、そこにふたたび一なる寝椅子が新たに現われて来て、それの[寝椅子としての]相を、先の二つの寝椅子はとものに貰い受けてもっていることになるだろう。そして、この新たな一つの寝椅子こそが[まさに寝椅子であるところもの]であることになり、先の二つはそうでないことになる》となっています。

 ハイデガーは、これは寝椅子(寝台)だけの問題ではなく、家と家々、樹と樹々などの場合を考えても同じことになるという想定のもとで、かなりの意訳を試みています。

 細谷先生がハイデガーのドイツ語から重訳した文章は《神がただひとつの家の(イデア)のかわりに、たとえ二つだけでも出現させるとすれば、そのときには更めてひとつのイデアが光り出て、前の二つはそれの観を自分たちの観としてもたざるをえなくなるであろう。そして、寝台や家の<何であるか>は、前の二つではなく、結局はこのひとつのものであるだろう》となっています。

 じっくり見ていきましょうか。

ει δυο μοναs ποιησειε「もしただ二つのものをつくったら」
παλιν αν μια αναφανειη「かえって一つのものを現われされるだろう」
ηs εκειναι αν αυ αμφοτεραι το ειδοs εχοιεν「それら(神がつくったただ二つふたつのもの)は再び一緒に実相(ειδοs)を持っていることだろう」
και ειη αν ο εστιν κλινη εκεινη αλλ ουχ αι δυο「そして、この寝椅子がそれ(二つものの実相となるもの)であり、先の二つはそうでないことになる」

 分解するとこんな感じではないでしょうか。

 藤沢先生の訳では「新たに」が意訳ですが、指示代名詞εκειναιは「すでに示されているもの」の指示代名詞ですので、「先の二つはそうでないことになる」というのは分りやすさを追求した苦心の訳であり、ここで「先の二つ」を使ったので、もし二つをつくったなら、そのモデルとなる寝椅子が「新たに」つくられることになるのだから、「新たに」という言葉を補ったのかな、と。

 αναφαινの古型で「現われさせる」という意味のαναφαναが使われていることや、持つという意味の動詞εχοの現在希求法εχοιενや英語で言えばbe動詞にあたるειμιの現在希求法でειηが使われています。

 次は証明にもなっていないのですが、プラトンの設定した創造者とは何か、という問題に明快な問えをハイデガーは指し示します。

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