「宇都宮徹壱が語る日本サッカーのミクロコスモス」
28日にNPO法人・横浜スポーツコミュニケーションズが運営している「フットボール道場」に行ってきました。これはスポーツバーでゲストと来場者がサッカーを語り合うトークイベント、とのこと。第17回フットボール道場のテーマは「股旅フットボール出版記念 宇都宮徹壱が語る日本サッカーのミクロコスモス」。
宇都宮さんは昨年、久々にサラエボに行ったそうです。空爆で破壊されまくった都市が見事に復興されており、それ自体は素晴らしいとは思ったというのですが、サッカーぐらいしか楽しみがなかったような街の住民が、最新のケータイを持って、動画なんかを楽しんでいる風景はあまりにも印象的というか何というかというあたりから話に引き込まれます。宇都宮さんは『ディナモ・フットボール』の取材などで97年からザグレブに行っているのですが、当時は日本人というだけで親切にしてくれた住人たちが、今では日本人からいかに儲けてやろうか、という感じに変わってしまったというあたりも含めて「今となってみれば、いい時期にバルカンを巡れたと思う」と過去形で語っていたのが印象的。
そんな宇都宮さんがJ1から数えると4部にあたる地域リーグにはじめて目が行ったのは04年。天皇杯を1回戦から追う企画の中で、中央にはほとんど知られていない地域リーグに所属するチームにもちゃんとサポーターがいて、それぞれ地域に根ざして運営されているという「それまで知らなかった風景に出会った」そうです。
この後、YOUTUBEに流れているという、おそらく地域リーグ好きの方がボランティアでつくったであろう「'07 全国地域リーグ決勝大会」の告知PVを見たのですが、素晴らしい出来に感心するとともに、地域リーグを突破して全国リーグというかJ2への参戦を見込めるJFLに駒を進めかどうかということが、いかに切実な目標であり、かつ困難な闘いであるかということが実感できました。地元テレビ局がファジアーノ岡山の全国地域リーグ決勝大会の模様を追った様子なども見ると、各地は意外と(失礼!)燃えているな、という印象です。また、地方紙の扱いも非常に大きいそうです(長崎などはカラーだとか)。
いま、Jリーグを目指すクラブは全国に30から50あるといいますが「恒久的に地域を活性化させるためのスポーツチーム」という役割は、地域格差が問題になっている中で、大きくなっていくだろうな、と思いました。
また、そうしたチームがようやっとの想いでたどり着いた約束の地であるはずの「J2は輝いているか?」という問いかけも新鮮でした。降格がなく、万年、下位に甘んじているようなチームを果たしてサポーターは応援し続けられるのだろうか、という問題も含めて「そろそろJ3の新設も視野に入れなければ」とぼくも思います。イングランドは4部までがプロ化されていて、プロサッカー選手は約3000人いるそうです。日本は2部までで約1000人。人口規模を考えれば、まだまだいけそうだと思いました。
前回、書評を書かせていただいた時、写真に触れることを忘れてしまったのですが、トークショーの背後で大型モニターでスライドショーされた作品を改めて見てみると、空が高く、夕焼けも美しく、影が長く伸びている写真が多いのに驚きます。照明設備もないし、高いスタンドもないから、そうした「マジックアワー」の風景を切り取ることができるんだなぁ、と。
にしても、『股旅フットボール』は煮詰まった企画の多い最近のサッカー本の中では本当に貴重な存在ですね。重版も決ったそうですし、もっと売れて欲しいです。
スポーツ関連のノンフィクションというと、沢木耕太郎さん以来、個人にスポットをあてたものが多いのですが、宇都宮さんは、組織とか地方とか国とか「集団」の栄枯盛衰を叙事詩的に描ける貴重なライターだな、と思います。
当日はティア・スサーナというお店で行われたんですが、トークの後の懇親会で出されたペルーの豆料理、フレホーレス(豆のシチュー)をかけたガーリックライスなんかも美味しかったですよ。
あと、これらの写真はK20D+16-50/f2.8で撮影したのですが、ASA1600にしてもノイズが目立たないのにはビックリましました。いいカメラです。久々に惚れちゃうかも。
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Comments
初めてお便りします。
楽しい店の紹介有難う御座います。
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Posted by: ティアスサナの親爺です。 | August 16, 2009 10:09 PM
どーも、その節はお世話になりました。少しでも雰囲気が伝わればよかったかな、と思います!
Posted by: pata | August 20, 2009 12:11 AM