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May 22, 2008

『文藝春秋』零戦と戦艦大和

Bungei_shunju_0806

『文藝春秋 6月号』昭和が誇る二大テクノロジーはなぜ敗れたのか 零戦と戦艦大和

 ずっと続いている半藤一利さんたちの対談シリーズが今回も面白かったです。

 今回は人物というよりテクノロジーの話というか戦艦大和と零戦の話。半藤さんは《零戦と戦艦大和は、日本を代表する二大兵器です。どちらも、当時の日本が持っていた最高の科学技術が投入され、国の命運を託されました。日本海軍にとっての太平洋戦争は、零戦が雄飛した真珠湾攻撃に始まり、沖縄戦での大和沈没によって終わったと言っても過言ではないでしょう》と語り始めます。

 最近、新たに認識したことのひとつは、1930年代において大艦巨砲主義は古いといわれつつも、日本だけでなく各国も戦艦をつくりまくっていたということですが、1922年のワシントン条約で八・八艦隊が不可能になった後、日本の造船業界は大和建造前に約15年間もブランクがあったというんですね。あと、この対談でも出てくるんですが、石川信吾というのは相当なワルですね。石川信吾はアメリカはパナマ運河を通行できないような戦艦は2隻つくれないから、大和一隻を日本がつくったら勝ちになるというデマゴギーで建造させたというんですが、よくこんな主張が通ったな、と。もっとも、造船業界の巨大利権もからでのことなんでしょうが。その関係で、隅田川にかかっている清洲橋、白髭橋、かちどき橋、両国橋、蔵前橋などは造船業の不況対策でかけられたというのも知りませんでした。

 零戦がダントツに優れていたのはその航続距離と低速での運動性能だといいますが、これが海軍の無謀な戦略を誘発したというのも面白い指摘だなと思いました。

 また、米軍は時代遅れになったとはいえ、戦艦を上陸前の艦砲射撃には使えるという形で有効利用の道を探っていったのに対し、日本はただひたすらに隠したというか、エアコン完備の大和ホテルとしての使い途しか考えなかった、というのもなんなのかな、と。

 あと、B29の開発計画は1934年からあって、42年には初飛行していて、その情報は秘密でもなかったので、高度9000mを飛んでくる巨大爆撃機を迎撃しなければならないということは認識されていたにもかかわらず、高々度で飛行できる液冷エンジンが開発できなかったというのは情けない…。あと、スピットファイアやメッセーシュミットのような液冷エンジンを積んだ機体は、馬力を上げるのには縦長にすればいいので簡単だった、というのは初めて知りました。

 こんなことがずっと語られるのですが、最後はなかなかよかったですよ。

《零戦と大和の二つがあったおかげで戦後の日本人がどのぐらい勇気づけられているのか、はかりしりません。そこからの幸福感のある物語が生みだされ、優秀な人たちが理工系の道を進み、アメリカに負けてばかりはいられないという志を抱くようになった。ものづくりの精神は、無形の神話にも支えられているのです》
《(金融の世界でアングロサクソンに勝てないのは)金融の分野ではまだ零戦や大和のような成功体験がないことでしょう。やはり鮮やかなサクセス・ストーリーなしには、人間はなかなか意欲を持つのも難しい》
《どんなジャンルであれ、世界一のものをつくりあげたという記憶を持っている国はそう多くはありません。やはり大和、零戦は日本国民が誇るべき歴史的な記憶だと思います》

《ただ、零戦、大和のような傑作も、使い方を誤ったために、悲劇的な結末を迎えてしまった。優秀な技術も、それを運用する総合的な力がなくては役にたたないという教訓とともに、後世に伝えたいと思います》という結びは納得できました。

『昭和が誇る二大テクノロジーはなぜ敗れたのか 零戦と戦艦大和 世界最高兵器の栄光と悲惨 決定版』

半藤一利/戸高一成/福田和也/兵頭二十八/前間孝則/清水政彦

1 無敵戦闘機と巨大戦艦の誕生 ─ 超々ジュラルミンと46センチ砲
2 山本五十六は猛反対した ─ 大艦巨砲か、航空主力か
3 零戦の致命的弱点は? ─ 日米パイロットの士気と勇気
4 大和をどう使うべきだったか ─ 戦略の不在と現場力の凄さ
5 ニッポン技術力の限界 ─ 官のタテ割り主義
6 ものづくり立国への遺産 ─ 新幹線、ホンダF1、松下幸之助

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