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April 06, 2008

『小説・十五世羽左衛門』

Uzaemon_15th_book

『小説・十五世羽左衛門』竹田真砂子、集英社文庫

 文庫化された後、大活字本シリーズでも出ていますので、意外な人気があるのでしょうか?

 十五世羽左衛門といえば「花の橘屋」「いい男羽左衛門」と呼ばれた美貌の持ち主。作者があとがきでも書いていますが《美人や美男子の基準は時代によって変わるものだけれど、この人だけは別格。写真で見るかぎり、二十世紀末の現在でも群を抜いていい男である。いい男の上に物事にこだわらない性格で、言動が明るく単純明快。だから男女を問わず、誰でももてた》(p.259)ぐらいの不世出の歌舞伎役者です。

 まさに江戸っ子の中の江戸っ子だったわけですが、実は、フランス系アメリカ人と日本人女性とのハーフだったというのは有名な話。でも、この小説を読む前は、そのフランス系アメリカ人がル・ジャンドル(日本名李仙得のち李善得)といいますか、グラント大統領とともに南北戦争を戦った北軍の司令官リゼンドルであり、日本政府は明治五年に外交顧問として迎えられていた人だ、というのは知りませんでしたね。

 明治十二年(一八七九)にはグラント大統領も訪日していますが、グラント=リゼンドルの北軍ラインというのは、明治の外交に大きな役割を果たしていたのかもしれません。それと同時に十五世羽左衛門まで残したというのですから、リゼンドルというのは日本に大きな影響を与えた人だったんですね。

 いまなら、ハーフの子どももごく普通に育てられますが、当時は大違い。日本人妻は酒呑童子の子どもを生んでしまったと嘆き、人に与えてしまったそうです。さらにもらわれた先からも、里子に出されたんですが、それが歌舞伎の世界に入るキッカケだったんですなぁ。しかし、大立て者になった後も《江戸っ子が売り物の市村羽左衛門が、混血児だなんてとんでもない》(p.46)ということでひた隠しにされます。

 もっとも本人は気にもかけていなかったようですが、そうした気性もスッキリしていて、《七十二歳で世を去るまで、美しい容姿を保ち続けてついに一度も老け役をやらず、花の二枚目を貫き通した》(p.49)というんですから大したもんです。

Uzaemon_15th_2

 その十五世羽左衛門を主人公にした連作短編小説集が『小説・十五世羽左衛門』。

 面白かったな…。

 にしても一番有名なこの写真も素晴らしいですが、文庫本の巻頭に置かれた遊びに行かせてもらったロンドンであつらえた燕尾服姿の羽座衛門の写真も驚きのカッコ良さです。

 テレビかなんかで本格的なドラマにしてくれませんかね…。

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