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March 04, 2008

『ヘッジファンドの真実』

Hedge_fund

『ヘッジファンドの真実』若林秀樹、洋泉社新書

 超お勧め。

 前から何回も書いていることですが、つまらぬスカスカの新書が多い中、洋泉社新書は情報満載の本が多いです。他の新書は書きっぱなしというか、編集の意見とかほとんど入ってなくって、タレ流しみたいな感じでラインナップを揃えるための点数を稼いでいるのに対し、洋泉社新書はキチッと編集と著者のフィードバックがなされている感じがします。同じようなジャンルで菊池正俊の『外国人投資家』を「思い切っていえば100万円の価値がある」と書きましたが、この本も、それ以上の値打ちがあります。

 素晴らしいのが図表。

 ほとんど筆者のオリジナルです。

 図表って、たいていはどっかからのバクリとか多いのですが、長年、プレゼンなどで使ってきたものをブラッシュアップしてきたのでしょう。素晴らしくわかりやい図表ばかり。経済の本は本来こうでなくっちゃいけません。

 著者は日経のアナリストランキングで97年から4年連続で1位を獲得するなど長年トップアナリストとして活躍した後、ヘッジファンド「フィノウェイブインベストメンツ」を設立したという人物。東大工学部を卒業して野村総研に入ったという、日本における理工系学生の金融工学志向の草分け(?)のような方です。

 ぼくも勉強不足だったので、確かに「ヘッジファンドってなに?」と問われたら、ソロスとかタイガーファンドみたいなイメージというか、為替というかグローバル・マクロで儲けているんじゃないかの…などと自信なさげに答えるぐらいでしたが、この本を読んだ今、「現在の主流は株式のロング・シュートだが、その他にも株式ニュートラル、債権アービトラージ、CBアービトラージ、マネージド・フューチャーズCTA、グローバル・マクロ、イベント・ドリブンなどがあり、多くのファンドはこうしたテトラテジーのうち、ひとつをつかって安定的なリターンを競っているが、いくつかのストラテジーで展開しているファンドを傘下におくファンド・オブ・ファンズなどもある」とビシッと説明できるようになりました(p.62、p.77などの図と表がわかりやすいです)。

 また、ヘッジ・ファンドの歴史についても概観してくれていますので、より理解が深まります(p.40-)。歴史とか学説史とか、とにかく大切ですよね。

 ぼくのまとめではわかりにくいかもしれませんが、著者のこんなまとめなら理解しやすいでしょうか。

 私の理解ではヘッジファンドとは、狭義の定義になるが、「絶対収益を確保するために、ロングとショート(買いと空売り)を併用し、相場の下落を回避し、要求されるリターンとリスクに応じて、ある程度のレバレッジを利かせるファンド」である(pp.26-27)。

 例えば、具体的には《中小型株をロングにして、成熟した大型株をショートにするという戦略が流行した。より成長率が高いと思われる中小型株の多くは(中略)株価も割安に放置されている場合が多かったからだ》(p.64)というような感じ。つまり、中小型株を現物で買い、株価が高すぎる大型株を空売りするという戦略です。

 実は、ぼくも同じような相場観を06年初め頃に持っていまして、自分で買うのも限界がありますから、小型株中心のオープンファンドを購入したことがあったんです。そしたら、まったく市場は逆に動いて大型株しか見向きもされず…という結果になったんですが、個人的には、大型株中心のポートフォリオの中でヘッジをきかせたんだとあきらめています。しかし、日本の多くのファンドも同じような失敗をしたというのは、少し慰めにはなったかな。

 《マスコミは「円キャリーで稼ぐ短期の投機筋ヘッジファンドが円安の背景」という表現をよく使うが、実は個人投資家、特に主婦の外資を運用する行動こそが円安の原因》(p.99)なんていう話も、個々のヘッジファンドはシングル・ストラテジーで運用されている例が多いという説明があるから、納得できます。まったく《TVなどに登場する評論家は無知に近く、いっそう間違った見方を増幅している》(p.185)という感じですね。

 あと、個人的に納得したのは《銘柄にも「相性」があること》(p.132)という一節。

 さらに《中長期主義者、あるいは中計をつくる人間は、ニュートン力学の信奉者であり、メッシュを細かくして、緻密に分析すれば、中期は予測可能だという立場をとる。しかし実際は、非線形、量子力学の世界であり、予測は不可能である。初期条件を変えれば実態は変る》《杜撰な予想ではダメだが、ある程度予想して売買して、微調整していくのが非線形、量子力学を少しでも齧って得た哲学》(pp.262-263)というあたりは、理系のアナリストっぽくてカッコ良いですね。

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