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March 07, 2008

『父 吉田茂』

Yoshida_shigeru

『父 吉田茂』麻生和子、光文社知恵の森文庫

 まあ、偉い人を父親に持つ娘が書いた本というのは、ファザコン気味といいますか絶賛のオンパレードになりがちなのですが、この本もそんな感じでした。ということでずっと放っておいた本なんですが、読むモノがなくなり、行き帰りの電車の中で読みましたんでチラッとご紹介。

 どこかで読んだようなエピソードが多かったのですが、寺内正毅大将が朝鮮総督だった頃、吉田茂が食事に呼ばれて《寺内さんが飼っていらした虎の子がお部屋にやってきてテーブルの下に入ってしまった》(p.60)ことがあったそうです。ふーむ、朝鮮総督は虎を飼っていたんですな。

 あと、戦前、シベリア鉄道経由でヨーロッパ視察に行った時の話も興味深いです。コンパートメントをとったとはいえダニがいるだろうということで寝袋を持参して、襟の周りにノミとり粉をふって寝たそうです。初めの三日はもってきた弁当を食べていたそうですが、それがなくなると売り子のもってくるアルミの器に入った清潔とはとてもいえないボルシュと乾パンでしのいだ、と。さらには塩のかたまりを買ってそれをかじったそうです(p.91-)。こうした旅にも、当時、19歳だった和子さんはついていったんですな。

 また、和子さんは祖父の牧野伸顕の湯河原の別荘にいたとき、2.26事件に巻き込まれ、青年将校に襲われるんです。不覚にも勉強が足りないので、青年将校たちはこんなところでも要人暗殺を謀っていたとは知りませんでした。もっとも、裏山に逃げた牧野伸顕がつまずいて倒れたのを死んだと勘違いして引き上げたというのですから、どこか間が抜けていますが…(p.100-)。

 また、吉田茂がイギリス公使の頃、大使館員にタキシードを買えとカネを渡したら、カメラ好きのその外交官補はライカを買ってしまったそうです。それを知った吉田茂は怒るでもなく「そいつで一枚、撮ってくれ」と言ったそうですから、なかなか粋ですな(p.239)。

 和子さんは、18歳になると社交界にデビューする令嬢のためにバッキンガム宮殿で催される舞踏会「プレゼンテーションボール」にも招待されたというのですから、いい暮らしをしています(p.131)。

 また、麻生家に嫁ぐことが決まった時には《お嫁にいってすぐに身のまわりのものを買うのはみっともない》ということで母親はどっさりと下着を注文してくれたというのですが《リネン類にイニシアルを入れる段になって、アメリカでは里の名前をいつまでも使いますが、イギリス式なら嫁入り先の名前を入れると聞いていましたので、どちらにするべきか迷いました》(p.142)というあたりも当時からすれば浮世離れした生活だったんでしょうな。

 政治家の話で面白かったのは広川弘禅の話。彼は禅宗の人で、招かれても自分の茶碗や箸を持参してきて、皿から自分の食器に移してから喰っていたそうです(p.228)。

 最後に、いわずもがなですが麻生和子さんは麻生太郎前自民党幹事長の母であり、もちろん吉田茂の娘であり、牧野伸顕伯爵の孫であり、大久保利通の曾孫でもある人です。

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Comments

牧野伯爵の滞在先は、湯河原の伊藤屋のことかと思います。
http://www.i-younet.ne.jp/~itouya/history/history226.html

手元に島本千也『海辺の憩い 湘南別荘物語』(私家版)がありますが、湯河原については書いてませんでした。

Posted by: hisa | March 08, 2008 at 02:19 PM

なるほど《当時祖父が別荘に借りてた湯河原の伊藤旅館の別棟》(p.99)とありますね。
あと「東京以外で事件の舞台となったのは弊館だけでした」というのも貴重な情報ですね。ありがとうございました!

Posted by: pata | March 08, 2008 at 11:24 PM

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