三月大歌舞伎
今月も歌舞伎座に行ってきました。見物したのは夜の部。出し物は『鈴ヶ森』『京鹿子娘道成寺』『江戸育お祭佐七』。
『御存鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)』は同僚を斬って鳥取藩から出奔した白井権八を捕まえて褒美をもらおうという雲助たちを逆に権八が切りまくり、それを見ていた幡随院長兵衛が呼び止めて、江戸での世話を約束する、という筋書き。「永遠の前髪役者」いい男羽左衛門の15世市村羽左衛門さんの当たり役だった美少年剣士、白井権八を演じるのは80歳になろうとする芝翫さん。かたや幡随院長兵衛を演じるのも同じ1929年生まれの富十郎さん。二人合わせて160歳近い舞台となりました。
「お若えの、待たっせやし」という名セリフもいいのですが、今は使われなくなったけども、味のある言葉がセリフに残されています。それは「つる」。
権八の前に身ぐるみはがされた飛脚の早助が、こうなったら仲間に入れてくれと雲助たちに願うのですが、仲間に入りたければ「つる=蔓」を持ってこい、と言われます。「つる」というのは、新入りの囚人などが挨拶のために牢名主などに差し出す賄賂のこと。
思い出したが『歌右衛門 合せ鏡』関容子、文藝春秋、2002。歌右衛門さんはNY公演の時、テーブルの上に座布団を三枚ぐらい重ねて鏡を使っていたらしいのですが、その姿はまるで『四千両』の牢名主そっくりで、歌右衛門さんも楽屋に入ってくる役者に「おう、つるは何百何十ドル持ってきた?」とすごんで喜んでいたそうです(p.169)。
芝翫さん、富十郎さんの鈴ヶ森の後は喜寿の藤十郎さんの「京鹿子娘道成寺」。愛之助丈、進之介丈、孝太郎丈などの若手はみんな「聞いたか坊主」。喜寿のお祝いでしょうか、押戻には團十郎が登場。一月に「還暦助六」をやったばかりの團十郎が若々しく見えました。
江戸育お祭佐七は本が練れてますね。
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