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March 22, 2008

『自動車ロン』

Jidousharon

『自動車ロン』福野礼一郎、双葉文庫

 福野さんのキーワードは「パッケージ」。エンジンやパワートレーンをどうレイアウトするか。その合理的な"思想"を評価するのが自動車評論であるというスタンスをとっています。

 だからといってはなんですが、EA266やエスティマなどの評価が高いんですね。ポルシェの試作車EA266とトヨタのミニバン・エスティマ。対極に位置するようなクルマの共通点はリアシートの下にエンジンを横倒すというレイアウト。

 EA266とは、ポルシェ社にVW社が設計を委託した初代ビートルの後継機。初代ビートルもポルシェ博士が設計し、ポルシェ社にはVW社がフォルクスワーゲンを一台製造するごとにロイヤリティが入り、その資金を元にレースに専念し、エンスーなクルマをつくりつづけていたわけです。

 当然、こうした蜜月が続くことを願いポルシェ社はビートルの後継機の設計に全能力をかけ、開発したのがEA266。しかし、エンジンをアンダーフロア・ミッドシップに置くというレイアウトは大量生産にカネがかかりすぎるということでVW社はEA266をキャンセル。グループのアウディのパーツを流用し、デザインをジウジアーロに委託したのがゴルフ、というわけです。VW社からのロイヤリティが入らなくなったポルシェ社は、70年頃から毎年のようにエンジンの排気量を2リッターからアップしていきます。2.2、2.4、2.7とアップした後はついに、あのターボを出してミーハーの受け狙いの会社となっていく、と。こうしたことが書いてある「幻の設計図」(p.46-)は最高です。

 しかし《1980年代のアタマの頃といえば、世のなかターボ、ターボの時代でありました。洗濯機もターボなら掃除機もターボ》(p.197)というのも笑える話です。

 戦前の日本ではいくらカネがあっても、赤いクルマには乗れなかったというのも知らなかったな(p.98)。赤は緊急車両に限定されていたそうです。こんな話を読むと、メルロ・ポンティではありませんが、真っ赤なスポーツカーに乗りたくなります。

 60年代のホンダF1に関して《日の丸がモダンでハイテクで素晴らしいデザインに見えてくるような》(p.152)というのは言い得て妙だな、と。《F1野郎がオシヤレな大衆車をつくってみるなんて、ちょっといい話じゃないですか》(p.154)というシビックは大好きです。本田宗一郎さんから受けた恩義(もちろんたんなる思い込みですが)に報いるためにも、最初に買うクルマはホンダ車にしようと思っていたなんていうことも思い出しました。

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