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March 20, 2008

『いよいよ自動車ロン』

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『いよいよ自動車ロン』福野礼一郎、双葉文庫

 花粉症のうっとうしい季節にはコムズカシイ本など読む気にはなれません。読書には大きく分けて啓発される読書と、愉しみの読書があると思いますが、こうした時期には読んでいてただ時間が過ぎていくという本にしか触手は動きません。ということで、久々に福野礼一郎さんの本をまとめて読んで、花粉の季節の序盤戦をうっちゃろうという計画です。

 福野さんの本では『自動車ロン』シリーズが未読でした。ということで最初から読んでいるのですが、エンターテイメントのライターの方々はフィクションでも、ノンフィクションでも、シリーズで書いているうちに、言いたいことが研ぎ澄まされてくる、という傾向がありますよね。だから職人芸なんでしょうけど、需要に応えるというか日々の仕事に追われる中で、徐々に形づくられていくものがあるのでしょう。

 福野さんのファンからすれば、彼のお得意のフレーズである「パッケージ」という概念が、このシリーズを読んで初めてクッキリと理解できたと書いたら怒られるかもしれませんが、ペーパードライバー歴の長さだけを誇る小生の場合、本気でクルマを買おうと思ったのは人生でたった3回ですのでお許しください(最初は免許取り立ての頃。2回目はバブル全盛の頃、あまりの暑さに会社近くの飯倉片町の旧三和ポルシェで涼んでいるうちにポルシェ911が欲しくなって衝動買いしようとしたのですが、納車が2年後と言われて素早く撤退。3回目は一昨年、ドイツ・ワールドカップでのあまりにも悲しい日本代表の戦いぶりに虚無的になり、いきなりディラー巡りをしてLEXUS ISを契約しそうになったという)。

 クルマの基本とはすなわち「パッケージ」である。  パッケージとはクルマの内側にどの部品をどのように配置し、居住スペースをどこにどう確保しながら立体としてまとめるかという作業のこと、あるいは作業の結果のことである。パッケージ次第で居住空間の広さやラゲッジルームの広さはもちろん、エンジンやメカのポテンシャル、運動性能や衝突安全性の資質まである程度決まってしまう。クルマのサイズそれ自体ももちろんパッケージ作業の結果である。  クルマはパッケージの上にスタイリングの薄皮をかぶって出来ている。パッケージ=体、スタイリング=皮膚、洋服、薄皮である。(p.103)

 というあたりから始まる第三章「ダメグルマ ポンコツ車を見抜く方法」は論旨明快。

 では「馬力」とは何か。  馬力とは一定時間内に行われる(出力される)仕事量のことだ。例えば1気筒で1回の爆発あたり5kgmのトルクを出すユニットを4つ並べて4気筒にし、これを1分間あたり6000回転の割合で、ちょうど1分間回してみたとする。クランクシャフトはその1分間に当然6000回転回ったわけだから、4つの各気筒ユニットはそれぞれ3000回ずつ爆発したことになる。4気筒合計で1万2000回の爆発、1回につき5kgmの1万2000倍のトルクを放ったことになる。この5kgm×1万2000倍をトルクでなく仕事量の単位(PSやhpやKW)で表示したのが馬力である。(p.165)

 なんてあたりも基本中の基本を語っているところですが好きです。

 ここの論旨を抑えておくと、以下の記述の良さが味わえます。

 総合すれば同じ馬力のエンジン同士なら1気筒あたりの排気量が大きい低回転型エンジンのほうがドラバビリティや低中速のパンチ力に優れ、多気筒・高回転エンジンより、「いい設計のエンジン」といえる。もっとも1気筒あたりの排気量もデカけりゃいいってもんでもない。1気筒500ccを超えてくるとムービングパーツなどが重くなって回転上昇が鈍化する。1気筒400cc以下だと1回転あたりのパンチ力が乏しい。おいしいのはスポーツカーエンジンで1気筒あたり450cc前後、セダン/RVで1気筒あたり500ccくらいというところだろう。(p.174)

 こんな感じでブレーキ、トランスミッションなどか説明されていきます。ホレますね。この硬質な文章。

 シリーズ3冊目となる『いよいよ自動車ロン』では深夜の東京をテストコースに見立てて走る"東京メトロテスト"もライブ感が伝わってきます。クルマの世界にはほとんど興味がなかった人間ですので、いまのミニ・クーパがBMWグループに入っていて、完全に設計がドイツ仕様になった素晴らしいFFスポーツカーになっているなんて知りませんでした。以前のモーリス・ミニ・クーパは《本国では貧困と無気力の象徴ですから(かくしてビーンもミニに乗る)』(『自動車ロン』p.45)というのも知りませんでしたが…。

 しかし、こういった本を読んでいると、一台欲しくなりますよね。

 で、ここまで読んできてロードスターがすごく欲しくなりましたw

『自動車ロン』双葉社、2002/9(双葉文庫 2006/3)
『またまた自動車ロン』双葉社 2002/12(双葉文庫 2006/10)
『いよいよ自動車ロン』双葉社 2004/1(双葉文庫 2006/12)
『自動車ロン頂上作戦』双葉社 2004/3
『最後の自動車ロン』双葉社 2005/3 ISBN 4575297879

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