田中角栄がいない不幸
自民党の主張と重なってしまうので、こうしたことを書くのはあまり気が進まなかったのですが、今の民主党が揮発油税(ガソリン)の暫定税率撤廃と地方財政の立て直しを主張している論拠が、日曜日朝の番組を見ても、こういってはなんですけど白痴的だと思ったので、あまりこうした問題では書かないのですがチラッと書いてみます。
細かな数字をあげると誰も読んでくれないと思いますので、ざっくり書きますが、道路関連の税収は国が3.5兆円、地方が2兆円です。そして、国の中心は揮発油税3兆円、地方の中心は軽油引取税1兆円です。わわかりやすく言うと国の中心はフツーの乗用車に使用するガソリンにかかり、地方はトラックが使用する軽油にかかります。
地方は自動車取得税などを加えて合計約2兆円の税収があり、それに独自の予算をほぼ同額つけて4兆円を道路に使っています。
つまり「ガソリン国会で地方分権が問われている」というような言いぐさは、真っ赤なウソなんでよね。地方財政を問題にするならトラック事業者が主に負担している軽油引取税を論議の対象にしなければなりません。
もし、民主党案のようにガソリンも軽油も暫定税率を全廃すると、軽油引取税の税収はほぼ半分の5000億円となります。地方自治体としてはほぼ決まった予算を執行しようとなると、あと5000億円を負担しなければならなくなりますが、これはちょっと不可能なんではないでしょうか。
道路予算を削ると建設やメンテナンスの事業を縮小しなければならなりません。結果、土木・建設業界の不況が深刻化します。
小泉改革で約600万人いるといわれた建設労働者は100万人減ったと言われます。これがさらに減るとなると、地方は生活保護の負担をさらに抱えなければならなくなります。失業率も高くなり、日本売りが加速するかもしれません。また、地方社会のモラルハザードの崩壊も心配されます。
だいたい、なんで軽油引取税は地方財源なんでしょうか?
それは戦後直後、まったく整備されていなかった地方の道路を走るためにはトルクの強いディーゼルエンジンでなければならなかったからです。もともとディーゼルエンジンはルドルフ・ディーゼル博士が戦車を駆動するために開発したのですが、エネルギー転換率が80パーセントを超える素晴らしい内燃機関です。日本ではポピュリストそのものといった感じの某東京都知事のおかげですっかり評判を落としましたが、問題はエンジンではなく、硫黄分などを漉していなかった石油元売各社の怠慢でススが出たということなんです。
田中角栄さんは、こうした税の根本を押さえていたと思います。いまさらながら彼みたいな地に足のついた勉強家がいないということを嘆くというのは寂しいことです。
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