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January 06, 2008

年末年始の歌舞伎

Kabukiza200712b_handbill

 年末年始は歌舞伎見物で楽しみました。どちらも午後の部。

[12月大歌舞伎]

 12月大歌舞伎はなんといっても『ふるあめりかに袖はぬらさじ』。有吉佐和子さんが元はといえば文学座のために書いた戯曲。杉村春子さんが当りを取った役を板東玉三郎丈が受け継ぎ、これまでも一般の劇場で公演していた芝居を、初めて歌舞伎としてのせたのが今回。楽しみでした。

 1等席なのに2階という不覚をとってしまた席ですが、歌舞伎見物を堪能した、という気分でしたね。豪華。あまりにも素晴らしい…。

 世は幕末。長患いをしていた花魁の亀遊(きゆう)が久々にお座敷に出ると、そこには米人イルウスが遊びにきていた。イルウスは亀遊を身請けすると言いだし、そのやりとりを通訳するのは密かに情を交わしていた亀吉であることにショックを受けた亀遊は自殺してしまう。尊皇攘夷のバカ侍が跋扈する中、岩亀楼にはアメリカ人の身請けを拒絶して自死した〝攘夷女郎〟がいたとの評判が立ち、岩亀楼には客が詰め掛けて大賑わいとなってしまう。そのきっかけは瓦版に「露をだにいとふ倭の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」というニセモノの辞世の句がのせられたから。亀遊の良き相談相手でもあった芸者お園さん(玉三郎)は岩亀楼主人に「せっかく来ていただけるお客さまを楽しませてあげないと」と説き伏せられ、無学で薄倖な亀遊さんは、武家の出にさせられる。最初の頃こそ、こうして語ることに疑問を抱いていたお園さんだが、やがてそれが芸になってしまう。しかし、ある日、いつもの調子で語っているうちに、つくり話であることが尊王攘夷派にバレてしまい…というのが大まかな流れ。

 全体としては泣き笑いの喜劇。幸せ薄い亀遊さんを演じる七之助さんがいい。この役を生身の女性が演ってしまうと、どこかウソっぽさが出てしまうのではないかと思いますが、女形が演じることでより抽象性が高まるといいますか、メディアにのせられてどんどんイメージが増幅してしまいそうな感じが出ています。

 玉三郎さんも潰すような声で、中年の芸者をユーモラスに演じる。例えば六世歌右衛門さんと比べてこうした余裕をみせるのは、時代の許容範囲が広がってきているからだと思う。歌右衛門さんは結婚させられたし、奥さんが亡くなった後も養子までとらされている。そういったことが歌右衛門さんの芸に影を生んだのかな…と余裕たっぷりでお園さんを演じる玉さまを見ながら思いました。

 端役にも海老蔵、獅童、福助、勘太郎、橋之助、三津五郎という一座が総出演する豪華な舞台でしたが、それをまとめるのが玉三郎さんなので、今は歌右衛門さんの役割を玉さまがやっているのだろうということが、わかります。歌舞伎俳優家の出身ではない勘弥 (14代目)の養子から、よくぞここまで…。

 勘三郎さんの岩亀楼主人が最高。笑わせてもらいました。セリフをやりとりするスピード感、間が最高。しかも、余裕たっぷり。アメリカ人イルウス役の彌十郎さんも旨い。体が大きいから相撲取りの役とかでよく見るけど、こうした役でもちゃんと脇を固めています。イルウスが亀遊を見初めるシーンのやりとりはこうなっています。

 玉三郎さんは、歌右衛門さんみたいにキメを長くとっているためか、この日も終演時間を15分近くもオーバーしてなんと9時43分。大満足の舞台でした。また、歌舞伎座で観たい、と思います。

Kabukiza200801b_handbill

[1月大歌舞伎]

 年が明けて、久々に桟敷席が取れたので、さっそく行ってきました。午後の部の話題は〝還暦助六團十郎〟。市川家でも還暦を迎えた團十郎が挑むのは初めてという「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」。歌舞伎十八番にもなっていますが、ちょっと古いしスピード感もない芝居なので、今回の「歌舞伎座120周年記念」などの行事にあわせてかかることが多いようです。午後の部は「鶴寿千歳」、「連獅子」と踊りが続いた後に助六という構成。

 桟敷席をとったのも福助さんと孝太郎さんが初役でやる助六の揚巻、白玉の花魁道中を東から観たかったということもあるんですが、ゆっくり観ることができるのはありがたいです。少し体が大きいもので、歌舞伎座の小さな椅子にずっと座っていると、固まってしまうこともあるぐらいでして。

 「鶴寿千歳」は昭和天皇の即位記念に御代が長く続きますようにという内容を所作事にした舞踏。孝太郎さんが人間国宝二人の前にチラッと踊ります。「連獅子」はおなじみ。獅子の親子がたてがみに見立てた長い毛を振りまくるという演出。親子で演じられることが多く、今回は幸四郎、染五郎の高麗屋親子が毛振で奮戦していました。

Kicho_3

 この時に、後ろのドアが開く気配がして「あ、お弁当がきた」と思うのは、嬉しくなっちゃいます。この日は吉兆のを奮発しました。

 助六ではダレ場で雰囲気を変える通人役の東蔵さんが笑わせてくれました。ケンカを仕掛けまくる助六を相手に自由に笑わせてくれる。なにせオペラ座、レジオン・ドヌール勲章、「どんだけー」に「そんなの関係ねぇ」まで飛び出ましたもんね。古くテンポも遅い芝居ですが、こうした自由にやれる部分を残しているのが歌舞伎が長い時間を生き抜き、しかも今だに大盛況となっている秘密なのかな、と。能や狂言、人形浄瑠璃では、ここまで脱線できませんもんね。

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