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December 30, 2007

『実況席のサッカー論』

Yamamoto_kurashiki

『実況席のサッカー論』山本浩、倉敷保雄、出版芸術社

 煮詰まった上に、安直なつくりが目立つような感じがして最近、あまりサッカー本には手を出していなかったのですが、年末に少し時間もできたので、これぐらい読んでおこうかと思ったのが『実況席のサッカー論』。NHKの解説主幹にして数々の伝説のサッカーの実況中継を担当した山本浩アナ、そして主にスカパーでの実況で活躍する倉敷保雄アナの対談。

 情報として面白かったのは、フジテレビの『プロ野球ニュース』はニュースでなく番組だということで、《番組だと出演料が発生する》という論法からスポーツ選手へのインタビューに謝礼が出されるようになったという経緯(p.12)。

 山本さんは自身が実況した試合はほとんど見返さないといいますが、アトランタオリンピック最終予選゛て本戦出場を決めたサウジアラビアとの準決勝の試合は《いや、これは見て感動しましたね》(p.119)というのは嬉しかったなぁ。ぼくも代表の試合でジョホールバルに次いで印象に深い試合はこれです。ふたつとも山本さんなんですよね。あと、解説者とのやりとりでは、テレビに写らない実況席で手を使って、話を振るとか途中で止めさせるなんてことをやっていたんですねぇ。

 日本の審判がうまくホームアドバンテージを取るという方向でなく、逆にアウェイ側に有利な笛を吹いてしまいがちだということに関しては、《学校の先生、教育者の方が多い》(p.137)というのはなるほどな、と。選手から文句つけられると逆上してすぐにレッド出したがるのも、学校の先生だからなのか、と。日本のJを魅力的にするためには、海外のようにもっとお医者さんとか自然なプライドを持っているような専門職の方なんかになってもらえないでしょうかね。

 あと、真相は闇の中でしょうが、ドイツW杯で日本は初戦、二戦目とも昼間の暑い時間帯での試合だったことに関して、これは電通が日本のプライムタイムに強引に合わせたというより、ヨーロッパの人たちが日本代表の試合をあまり面白くないと思って、同じグループならブラジルの試合を夜にしてもらって、それをテレビで見たいからだった、というのは、ひとつの見方でしょうね(p.150)。

 後は野球との関係で…。

 《勝負というのは、だいたい全体の三分の二が終わったところから始まる》(p.85)という話は納得的。プロ野球中継が面白くなく、高校野球中継が面白いのは終盤の8回、9回をしっかりと伝えているからですよね。

 野球との比較に関していえば、中継や生の試合を友人同士で見ながらの会話にしても、野球ほどの深さにはまだまだいってないと思います。といいますか、思い切っていえば、サッカー解説者の中には居酒屋で話している野球好きの親父さんたちにレベルが劣るんじゃないかというような人も少なくありません。日本のサッカーのレベルが全体として上がるためには、こうした素人の目がどれだけ向上するかというのもひとつの指標になると思います(事実、サッカーの戦術理解が平均すると最も進んでいそうな清水のサポーターに囲まれてアウェイで見ると、実に彼らが的確な表現で試合を見ながら語っているかがわかります)。

 WBCのチャンピオンは日本ですが、その実力は試合を見ながらの会話のレベルの高さからもうかがえるのではないでしょうか。お茶の間解説者のレベルでは、間違いなく日本が世界一だと思います。

 しかし《今の球界はピンストライプジャパン、つまり日本代表チームを作るのに一生懸命なんです。そうしないと、サッカーのブルーのユニフォームに全てを取られるという心配があるんです》(p.131)とも。

 とにかく、全体として高いレベルまで行くためには、テレビの解説のレベルも含めてもっと上げていかなければならないと思いますので、今回の対談集は良い企画だったと思います。昔の試合なんかも思い出しましたしね。

 あと、アナウンサーの功名心に関して《歌舞伎の世界でも大きい仕事は年配の人がします(中略)もうバリバリの功名心がない人達。いまさら功名心があったってどうにもならないっていう年代》(p.75)というのもなるほどな、と。

 蹴鞠の神様である鞠精大明神が奉られているのが京都の白峯神宮だというのは知らなかったな(p.113)。今度、いってみよう。

 ぼくはFC東京の平山選手に関しては、「力を出し惜しみしているんじゃないか…」という印象がずっとありました。FC東京に入ったのはいいけど、せっかくオランダリーグで10点獲って、ポジションもとれそうだったのに帰ってきちゃったり(そもそも大学なんか行かずにすぐにプロになってほしかったのに…)。でも、彼はオランダで虐められたそうです。ヘラクレスの会長は、選手達に平山のユニフォームが売れたらボーナス出すと約束したのにあまり売れなかったから、チームメイトから「なんだよ平山」ということになったそうで(p.127)。これは可哀想かな。

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