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October 16, 2007

ちゃんとしたボクシングを見たい

Olivales

 先日の論評にも値しないような世界タイトルマッチを別としても、すごい!と思うボクシングの試合に、ここ15年近く出会っていません。

 90年代以降、最も衰退したスポーツはボクシングではないでしょうか。

 ぼくがいっても詮方ないことですが、世界王者を決める団体を統一し、インフレ気味のランクをフライ、バンタム、フェザー、ライト、ウェルター、ミドル、ジュニアヘビー、ヘビーぐらいに再編し、価値を高めてもらいたいです。個人的に親父とは仲が悪かったのですが、ボクシングだけは一緒にみていた、というのも今となっては大切な思い出です。そんな試合の中には、いまでも、その話だけで酒が飲めちゃうような素晴らしい試合がありました。オリバレスvs金沢戦なんか残念ながら、DVD化されていなかったんですが、なんと、youtubeで見られるんですね。

 個人的なベスト3バウトは以下の通りです。

SS+ ルーベン・オリバレスvs.金沢和良 世界バンタム級 1971

 当時はまだWBCやIBFなどの団体はなく、世界バンタム級チャンピオンはただ一人。王者に君臨していたのはそれまで65勝61KOという怪物オリバレスのみ。13回の猛ラッシュで精力、気力とも使い果たした東洋チャンピオン金沢は14回、2度までもマットに沈められます。2度目の時は、さすがにこれで終わったと思ったのですが、なんと、気力を振り絞って立ち上がり、無敵のオリバムスに対して「てめぇ、ぶっ殺してやる」と叫びながら立ち向かっていったのです(ちなみに、テレビではなにか叫んでいるな、という程度しかわかりませんでしたが)。金沢の気迫と、最後の力を振り絞ったスイングはオリバレスをおびえさせますが、ついに3度目のダウンを喫し、TKO負け。

 オリバレスvs金沢の試合は1971年の年間最高試合に選ばれたんですが、いまもって日本プロボクシング史上、最高の試合でしょう(ファイティング原田vsエディ・ジョフレもありますが…)。ウエイトコントロールに苦しんだ上に、この試合で金沢に打たれまくったオリバレスは精彩を欠くようになり、72年には王座陥落。フェザー級となりますが、階級を上げたことで、それまでのようにだいたい5回以内にKOで決着をつけるという無敵の強さはなくなります。『明日のジョー』のラスト、破れかぶれになったジョーの強打におびえるホセ・メンドーサは、金沢戦のオリバレスがモデルだと思います。

 Bantamweight Ruben Olivares vs. Kazuyoshi Kanazawa II

 なぜタイトルがIIとなっているかといいますと、金沢はメキシコで一度、オリバレスとやってKO負けくらっているんですよ。だからこれは第二戦目なんです。しかし、互いにクリンチしないし、疲れまくっているのにフェアな試合ですよね…。これと、今、やられているような試合を同じ世界戦と呼びたくはありません。

 Number 199(1988/7/20)でビートたけしさんが金沢和良さんと対談しているんです。金沢さんは、奥さんの実家のお寺を嗣いで和尚になっていたんですが、酒場で出会って以来の友人だそうです。この対談は面白かった(pp.38-41)

たけし こん時おれ、新宿のジャズ喫茶のボーイやってたんだよな。「無知の涙」書いたあの永山則夫と早番、遅番組んでた。ちょうど安保闘争やなんかあって学校行かなくなって、何にもやることがない時でね。でもこれ観て、あれだけ人を熱狂させる人たちっていいなと思った。金沢さんが立ち上がって向かってくとこなんか、涙出てくるじゃない。もう圧倒的な感動があるな。

金沢 この試合の後、この人も引退しようと思ったんだって(中略)。

たけし まぁ、いまの審判だったら止めさせてると思うね。2度目のダウンしたあたりで、やらしてないよ。大体セコンドがタオル投げ入れてるんじゃないかぁ。最後に何と叫んだんですか?
金沢 「てめぇ、ぶっ殺してやる」って。逆に殺されちゃったけどね、漫画ですよ(笑)。あんなにせんだっていいのにね。でも、会場に来ていたメキシコ人たちも凄くこのシーンには感動したって、後で聞きました。
たけし おれ、これを観たとき、金沢って男悔い残ってないだろうな、って思ったね。

たけし (もう辞めたいと思っているんだ、という話の後)だけど、ここで投げ出してすっきりしちゃっていいのか。おれはイヤだよ。金沢さんの試合でいえば、おれ、いま8Rか9Rのあたりだと思っているからね(中略)14R、金沢さんが2回目のダウンのあと立ち上がったファイト、ワーッというあの叫びは、何ともいえないからさ。あれに感動するんですよ。おれもあそこまで追い込まれてなきゃいけないな、っていま改めて思ったね。


SS ロベルト・デュランvs.エステバン・デ・ヘスス 1978

 ガッツ石松は日本が生んだ偉大なるライト級王者でしたが、その石松を含め日本人選手などを相手にしなかったWBA王者ロベルト・デュランが、当時たった一度だけノンタイトル戦で敗戦を喫したWBC世界ライト級王者エステバン・デ・ヘススと統一戦を行った意地の試合。昔でいえば、世界チャンピオンと同級1位の指名試合といったところですが、団体が別れているのでやらなくてもいい統一戦を行ったところがデュランの偉いところ。それを受けたヘススも素晴らしい。12回、デュランがヘススの体を浮かせるアッパー気味の右のカウンターでKO。ぼくが見たパンチの中で、こんなのは見たことがありません。

Roberto Duran -vs- Esteban DeJesus III 1978

SA マービン・ハグラーvs.トーマス・ハーンズ 1985

 3階級制覇を賭けて挑んできたトーマス・ハーンズと初回から激しい打ち合いを演じ、得意のテンプルへの一撃から3回TKOで仕留めた試合。ハグラーのベストファイトでしょう。ハグラーはレナードにタイトルを盗まれれて引退しますが、ミドル級最強王者でしょう。生涯戦績 67戦62勝(52KO)3敗2分。あまりの強さに王者が対戦を忌避し、せっかくチャンスがめぐっても判定で盗まれることが相次ぎ、世界タイトルを取れたのはなんと54戦目。みんな強いと苦労したんです。当時、促成栽培なんか本当に一握りでした。

 Marvin Hagler VS Thomas Hearns

 ハグラーはベスト・バウトもまとめられています。

THE BEST OF MARVIN HAGLER

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Comments

ちゃんとしたボクシング・・ですね、同感です。
あまりにも無残で、あまりにも滑稽なタイトルマッチ。
その責は、挑戦者とその家族が、負うべきかとは思いますが、
持ち上げるだけ持ち上げた連中も、同じだけの責を問われるべきでしょうね。

思い返せば、高橋ナオトとマーク堀越の、壮絶な試合が、80年代の終盤で、
辰吉丈一郎という、稀有なボクサーが出現した90年代。
ユーリ・アルバチャコフの放つ、右クロスに戦慄を覚え、
平仲明信の不運に、心痛めた、あの頃。
比べてみると、ボクシング界も様変わりしましたねw

佐瀬稔氏が、ご健在であれば、
今の「拳闘」の状況、どう表現されたでしょうか?
嘆きの中にも、光明を見出されたような気がしますが、
今となっては、叶わぬことですね・・・


Number 199(1988/7/20)号、私も大事に持っていますw
Numberが、Numberたりえた頃の、素晴らしい対談記事ですよね。
Numberで、ボクシングの特集をした号は、ほぼ購入し、保管してます。
三国連太郎さんのインタビュー、沢木耕太郎さんと、吉村昭さんの対談・・・
中でも、佐瀬稔さんのテキストは、何度も読み返し、その度に感動を覚えましたっけ。

いつの日か、今後の日本拳闘界が、あの頃の熱を取り戻す時が来るよう、
切に願っています。

Posted by: GIG | October 17, 2007 at 12:01 AM

GIGさん、コメントありがとうございました。ユーリは日本を中心に活動した、いまんとこ、最後の世界的な選手でしたね。雰囲気ありました。

佐瀬稔さんですか。ガンでお亡くなりになっちゃって…『敗れてもなお―感情的ボクシング論』どこかにありました。読み直してみますかね。

某亀田家に関しては、あの品がなさすぎるピーカブースタイルも含めて、ちょっとおかしいと思っています。例えば、ペドロサみたいなリーチが長くてアッパーの旨い選手とやったら、なんにも出来ないうちに叩きのめされるでしょう。

世界団体が増えすぎ、1位選手との対戦義務づけも好い加減になり、どんなタイプの選手ともやらなければならないということがなくなったため、スタイルが固定されてしまいましたよね。どんな選手でもかかってこい、というチャンピオンがすくなくなってきました。世界をみても、ホプキンスぐらいですかね、最後のそうした選手は。

本当に構造改革が必要です。まあ、ぼくが言っても詮方ないですが…

Posted by: pata | October 17, 2007 at 08:36 AM

雰囲気、空気を纏った選手って、
本当に魅力的ですよね。
昔の選手は、たとえ王者ではなくても、
魅かれる空気を、プンプン発してました。
今は昔、ではありますが・・。

>品がなさすぎるピーカブースタイル

まさしくw
そう言えば、幼少の頃の「ピンポン玉避け」は、
役に立ってるのか、甚だ疑わしい。
己が技巧を、相手と比べるのではなく、
ただ単に、打たれたくないが為の、ピーカブー。
情けない!
王者と14位の選手という、前代未聞のミスマッチを見るにつけ、
本当の意味の構造改革が、心から望まれます。


感情的ボクシング論、所有してます、私も。
1作目の、「彼らの勇気と誇りについて」の中で語られている、
中西清明選手の話は、何度読み返しても、
涙を堪えることが出来ません。
佐瀬さんは、4回戦の試合でも、深い愛情を込めて観戦し、
原稿をしたためられているのが、非常によく伝わってきました。

最近は、佐瀬さんや山際淳司さんのような、
競技・競技者に、愛情を持って接している人が、
少なくなっています。
非常に、悲しいことです。
商業主義が、我が物顔でまかり通る現代。
こちらにも、真の構造改革が必要なんでしょうねえ。

Posted by: GIG | October 17, 2007 at 09:49 PM

中西清明さんは現役時代は存じ上げていませんが、負けっぷりの良い選手だったらしいですね…

同じように顎が弱い選手では柴田国明もいましたが、常に倒すか倒されるかの勝負を挑んで偉大なるザンジバルを敵地メキシコでストップしたんですから、スゴイ選手でしたよね。

亀田のピカーブーは、彼らの精神を見せられているようで、本当に嫌いです。互いにフェアに打ち合う、ということを忘れています。少なくともスポーツの精神とは真逆の姿勢ですよね…。

実はあの試合で、内藤のことは初めて見ました。正直「なにあの腰の入ってないテレフォンパンチ」とガックリしましたんですが、その後、友人と話していて「あるボクシング関係者が『最低限、ひどい反則はやらないという信頼関係がないと、踏み込んで打ち合えない。内藤ももっと鋭いパンチを打ちたかったと思うけど、何してくるかわからないから、あの程度しか打ち込めなかった。内藤も悔しいと思うよ。だから亀田兄とやりたいかと問われても、やりたくない、と答えていたんだ』と語っていた」という話を聞いて、反省しました。接近してヘッドバット、足踏みパンチ、ローブローなんかやられたらたまりませんからね…

Posted by: pata | October 18, 2007 at 03:58 AM

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Tracked on October 17, 2007 at 12:57 PM

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