フェルメール『牛乳を注ぐ女』
アムステルダム国立美術館所蔵フェルメール『牛乳を注ぐ女』とオランダ風俗画展 新国立美術館
フェルメールの全35作品の中でも、『真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)』『水差しを持つ女』などとともに、最も有名な作品ではないでしょうか。
アムステルダム国立美術館の至宝が本邦初公開ということで見てきました。生のフェルメールを最初に見たのはルーブルの『レースを編む女』。今回で2作目となります。
平日のお昼時でしたので、それほど込んでなくて、じっくり対面できました。
『レースを編む女』と同じように小さな絵なんですけど、描かれている光の粒に回りの空間すべてが吸収されそうな錯覚を覚えるといいますか、静謐さの中に吸い込まれていくような感じ。
フェルメールの絵を見ると(もちろん大半は画集ですが)、いつも谷川俊太郎さんの詩集『定義』にある「コップへの不可能な接近」の一節を思い出します。それは最後の部分。
《それは主として渇きをいやすために使用される一個の道具であり、極限の状況下にあっては互いに合わされくぼめられたふたつの掌以上の機能をもつものではないにもかかわらず、現在の多様化された人間生活の文脈の中で、時に朝の陽差しのもとで、時に人工的な照明のもとで、それは疑いもなくひとつの美として沈黙している》
谷川さんは雑誌「BRUTUS」(1996.8/15-9/1合併号)のフェルメール特集号でも《すでに私はフェルメールに渇いている、画の前を離れた瞬間から渇いていたのかもしれない、その渇きはフェルメールを見たという束の間の満足に、ほんの少しの間いやされていたかに思えただけだったのかもしれない》と書いていますが「沈黙している美」「渇き」というのはフェルメールを見る時に思い起こさせる言葉です。
小さい絵なので細部をじっくり見たい方は小さいけど高性能の双眼鏡とか持っていくといいかも。12月17日までやっていますので、ぼくも次回はニコンのビノキュラ持っていこうと思っています。
にしてもここは戦前、旧陸軍の連隊場だったんですよね。
戦後、長い間、米軍施設となっていたんですが、今やこうした建物が建ち、ポール・ボキューズ系のカフェで一休みできるっつうのも、本当に平和の配当だな、とCafe COQUILLEでアイスティーを飲みながら考えていました。
こんどはブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼでプリフィクスのランチでも食べてみようかな、とか。
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 『菅原伝授手習鑑』道明寺の歌舞伎的工夫(2020.02.06)
- 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の影の主人公はジミー(2020.01.16)
- 菊田一夫作『霧深きエルベのほとり』の対照構造(2019.01.27)
- 『アリー/スター誕生』(2018.12.23)
- 清元栄寿太夫の十六夜清心(2018.11.08)
Comments