『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』上杉隆、新潮社
戦後、最低最悪の政権が1年であっけなく崩壊したことは本当によかったと思います。今日は、出張だったのですが、その行き帰りで、ウワサの『官邸崩壊』を読みました。本人だけでなく、広報担当の世耕補佐官など取り巻きの連中たちの行動が、巷間伝えられているとおりのくだらなさだったことも書きこんでいて、「それにしても、よくこんなヒヨッコみたいな首相を自民党は選んだもんだ」と改めてゾッとしています。
この本は辞任を発表する前に上梓されたのですが、参議院選挙の終盤、応援演説でも人が集まらなくなってきた時、意気消沈する安倍首相を井上主席秘書官がひとり《総理、すごい人手です》(p.12)と不安に陥らないように励ましていたという話は、なんか童話的というか神話的なものさえ感じさせます。もう向こう岸に行ってしまったような、というか。
そんな安部政権でしたが船出は華々しいものでした。小泉首相が、今は袂を分かった飯島秘書官と《「3ヶ月は持たせよう。それが無理ならば、めて、羽田政権(在任期間64日)は抜こう」》(p.26)と語り合ったのとは大違い。なにせ、いきなり「戦後レジームからの脱却」なんていう気宇壮大な目標を掲げるんですから。ちなみに、この「戦後レジームからの脱却」というフレーズは当初、アメリカの神経を尖らせたようですね。とりようによっては米国の世界支配に叛旗をひるがえすともうけとれますから。こんなことにも思いをいたさなかったなんて、なんて危機管理ができていなかったことか…。
今は首相の福田康夫氏との比較も筆が冴えてます。《福田には、首相(福田赳夫)の息子でありながら、安倍には無いニヒリズムが漂う》(p.31)なんてところは言い得て妙。
一方、安倍は晋太郎外務大臣の秘書官となって政治家としてのスタートを切るわけですが《仕事に飽きれば、読書の時間が待っている。しかも難しいものはない。大抵マンガだ。マンガを読んでいても誰からも注意されない。いや注意できないのだ。資料の山は教育係の秘書が持ち帰ってくれる。安倍は自分の部屋でテレビゲームに熱中していればいい。そうすれば翌朝には文事書類は整っている》(p.35)なんてあたりの描写はゾッとさせられます。ぼくは『美しい国へ』を読んで、あまりの底の浅さに愕然としたのですが(元々は『ぼくらの国家』という題名だったとのことw)、その理由のひとつがわかったような気がします。
この本は安倍前首相だけでなく、井上主席秘書官、的場官房副長官、塩崎官房長官などとりまきの連中のくだらなさも思い切って書いているのですが、中でも傑作なのが広報担当の世耕補佐官。なんの予備知識もなくマイケル・ホンダ議員の従軍慰安婦問題での決議案つぶしに走ったおかげで、わざわざ問題を大きくし、最後には安倍前首相の「強制はなかった」発言まで飛び出したおかげで、今年3月だけでニューヨークタイムズは7回にもわたって従軍慰安婦と安部政権の姿勢について書きました。だいたいこの世耕補佐官、小泉首相のキャラだけで勝ったような郵政選挙をまるで自分一人が仕切ったようなことを言い出して『プロフェッショナル広報戦略』という自画自賛のオンパレードの自著まで出版し、さらには『自民党改造プロジェクト650日』なる本まで上梓し《自ら2度にわたって、自身の仕事を自画自賛したことで、広報関係者の間での世耕の株価は一挙に暴落する。一夜にして「切れ者」から「愚か者」になった》(p.143)のですから。ここらあたりの文章は冴えているといいますか、キータッチも軽やかですね。
提灯記事で安倍政権を支えた産経新聞の黒シャツ記者などで構成される「特務機関」の存在なんかもゾッとさせられます。こんなことだから、ナベツネさんにも『美しい国へ』に関して《過去最低の政治家本》(p.164)とコキおろされるんでしょうな。
もっと書きこんでほしかったのが、官僚たちとの戦い。人事などで官邸主導wを図ろうとして、今年になって安倍政権は無理筋を通し始めるのですが、それを押し通すことにって、最終的にソッポを向かれてしまったんだと思うんですよね。
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