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September 08, 2007

『だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法』

Daredemo

『だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法』池谷裕二、ライオン社

 題名はスゴイし、未来ある研究者がここまで書いて大丈夫なんだろうかと心配になってしまいますが、『進化しすぎた脳』の復習だと思えばいいのかも。薄いし、サクッと読めるのもいいです。小学校高学年から高校1、2年ぐらいの子どもを持つ親御さんたちには「まあ、読んでごらん」と勧めるでしょうね。

 内容を思い切ってサマライズすると、一千億個の神経細胞で構成されている人間の脳も、もし外部の刺激を全て記憶していたら5分以内にパンクしてしまう、と。脳は覚えるより忘れることが得意で、記憶できるのは感情が絡んだ出来事と本人が覚えようと意識したことが中心だ、と。また忘却曲線を考えるならば、いったん覚えたことを長く記憶に留めるには復習しかなく、しかも無意識の記憶の保存期間を考えれば一ヶ月以内に行わなければ記憶は脳内にとどまらない、という感じでしょうか。

 また、参考書はひとつ、基礎からレベルアップすることを目指して最初に大局を理解することが結局は近道で、まず得意科目をひとつつくれば他の科目の修得も楽になり、目の記憶よりも耳の記憶の方が残るので音読は非常に有効で、継続こそ力なりであり、記憶の整理を行うために学習した後には六時間以上の睡眠が不可欠、なんていう実践的なアドバイスも豊富です。

 まあ、こう並べてみると新味は少ないのですが、まず感心したのは《中学生くらいまでは知識記憶がよく発達していて、その年を過ぎると経験記憶が優勢になってきます》(p.60)というあたり。中学生頃までは、子どもが意味のない文字や絵や音に対して驚異的な記憶力を示すように、丸暗記ができる時期。だから九九も10歳になる前に覚えさせるんだそうです。一方、高校生頃になると、論理や理屈を覚えて応用するという経験記憶が優勢となるため、丸暗記は苦手となるから、こうした脳の変化に応じて学習方法を変えなければならない、というんですね。《小中学生の頃までは優秀だったのに、中高生になると成績がダウンしてしまう生徒を見かけますが、自分の記憶力の変化に順応できなかったケースが多いようです》(p.62)というのは、長い間疑問に感じていたというか、なんとなく感じていたことに対する素晴らしい説明だと思います。

 《ストレスは、記憶にとって天敵です。ストレスを感じると、体から「グルココルチコイド」という悪玉ホルモンが分泌されて、記憶力を低下させてしまうのです》(p.13)というのはふたつ驚きました。ひとつは「悪玉ホルモンかよw」という言葉の感覚の問題ですが、以前はグルココルチコイドというのはストレス反応から体を防御すると思っていたので、世の中、研究の成果で変わっているんだな、と感じたこと。あとで、インターネットを調べてみたら、「このグルココルチコイドは、ストレスが加わった時期が短期間であると生体防御の働きを行う。しかし、ストレスが慢性的に持続したりすると体に対して侵襲的にはたらく。最近では、このグルココルチコイドが情動や記憶を司っている大脳辺縁系に関与することが発見されている。特に大脳辺縁系を構成する海馬において、その細胞が傷害されることが発見されている。つまり、ストレスによって脳が傷害されることになる」んだそうですな。

 池谷さんは九九を覚えていないけど「10倍する」と「2倍する」と「半分にする」という3の法則だけで7*8=7*10-7*2=70-14=56となり、ちょっと複雑な計算では26*17=26*10+26*10/2+26*2=260+130+52=442となり、かえってこっちの方が早いなんて話も出てきます。そして、こうした独自の応用記憶をみつけて《すべてのものごとの見通しを良くして、総合的な理解力、判断力、応用力を高める》(p.93)ことが勉強することの意味なんだ、というのがまとめになるんでしようね。

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