『300』Blu-ray
『300』でスリーハンドレッドと読ませます。
そもそもトンデモ色の濃いヘロドトスの『歴史』を自由に脚色したコミックを原作にしているだけあって、なんでもアリのアクションムビーになっています。ワーナーは『アレクサンダー』『トロイ』などの古代戦記モノを立て続けに造ったわりにはアメリカ国内の興行的は思ったほど伸びなかったのですが、この『300』はバカ当り。『アレクサンダー』『トロイ』は海外での興行収入が良かったらしいのですが、この『300』は逆のパターンじゃないでしょうかね。「自由のために命をかけて戦う」と思い切りデフォルメした単純な物語がアメリカ人の好みにあったのか、米国内では劇場での興行収入もさることながら、DVD、Blu-rayも売れまくりだそうです。とにかく、今後、映画の新作はDVDで買うつもりはないので、Blu-rayで観ました。
スパルタの兵士たちなのですが、腹筋を強調するためでしょうか、重装歩兵なのに、なんと全員、上半身裸。これってダヴィッド(Jacques-Louis David 、バカバカしいまでに大きいルーブルの『ナポレオンの戴冠式』)の『テルモピュレーのレオニダス』あたりからヒントを得ているのでしょうかね。その不自然なまでの非現実性が、なんとも物語の虚構性とマッチしています。
しかも、半裸のスパルタ兵たちはシュワツァネッガー系のバルクがあるタイプではなく、ダヴッドの絵と比べても痩せていてキレといいますか割れを重視したタイプ。これって、スパイダーマンも含めての流れなんですかね。あのバルクを維持するためには、どうしてもステロイドなどに頼らなくてはならず、それが社会でも一般化していまうと、かえってうっとうしい、ということなんでしょうか。しかし、主演のジェラルド・バトラーが貧相なためか、ヤリを持って叫んでいる写真なんかは気のふれたホームレスのようにも見えてしまうのがなんとも…。
さて、物語は岩波文庫のヘロドトス『歴史』でいえば、下巻あたり。ギリシャ人とペルシャ人との戦争を、うわさ話を元に書きまくってたヘロドトスの物語のクライマックス。クセルクセス率いるペルシア軍をテルモピュレーで迎え撃とうとしたスパルタ王レオニダスですが、カルネイア祭の最中は軍隊を出撃させられなかったため、やむを得ず、少人数で迎え撃ったということをベースにしています。
このほか、隘路のためペルシア軍は大兵力を展開できなかったこと、ペルシア軍の「不死隊(アタトナイ)」も打ち破られたこと、ギリシア軍はペルシアの大軍相手に3日間持ちこたえることや、挟み撃ちされる最精鋭三百人隊(ヒッペウス)なんかの骨格は踏まえられていますが、半獣のようなペルシア兵、サディスティックなクセルクセスの描き方など、まあマンガ的といいますか、ブッシュ・ジュニア時代の雰囲気を濃厚に繁栄しているノー天気ぶり。ある意味、まさにここまでやって恥ずかしくないのは「心臓に毛が生えている」としかいいようがありません。さすがにレオニダスの末裔を詐称するだけのことはあります。
しかし、全てのシーンが画像処理され、人体を突き刺した槍を引き抜いた後、穂先から血が逆方向に飛び散るなんていうシーンは、確かに今まで誰も見たことのないような映像。ただし、あまり見たくもない未来を見せられた感もするのが玉に瑕。
非圧縮のリニアPCM音声はさすがにバランスがよかったですね。低音を強調しすぎず、セリフもよく聞こえます。50GBのBlu-rayの大容量を実感できる1枚でした。
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