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April 07, 2007

『日本中世に何が起きたか』

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『日本中世に何が起きたか 都市と宗教と資本主義』網野善彦、洋泉社

 網野善彦さんがお亡くなりになってもう3年もたつのですが、まったく、いなくなってしまった、という感じがしません。

 どんどん未刊行の対談、小論が出たり、手に入りにくかった単行本の新書化などが行われていて、ぼくなどはご存命の頃よりも、よほど網野さんの問題意識を感じながらモノゴトを見ている気がします。同じようにクレイジーキャッツの植木等さんも、先日お亡くなりにはなりましたけど、必要な時はいつでも、心の中で歌って踊ってくれるので、生前と変わりはないような気がします。そろそろ、ぼくが好きだった人たちが、お亡くなりになっていくことが多くなってきて、こうした問題も考えさせられるのですが、結局、ずっと心の中にいるということが社会的には生きている、あるいはその人よって生かされてされていることなんだろうなと観じている次第です。

 さて、この本は日本エディタースクール出版部から出されていた本の新書化。網野さんは都立北園高校教諭だった頃に生徒たちから出された「なぜ天皇制は打倒されなかったのか」「なぜ平安末・鎌倉という時代にのみ、すぐれた宗教家が排出されたのか」という質問に答えるために研究を続けてきた、というのが伝説になっていますが、この本は後者の質問についての粗い回答になっています。

 最後の「宗教と経済活動の関係」の中で書かれていることをまとめれば、《人は自らの生産物をそうした人の力をこえた「聖なる場」ー「市庭」に投げこむことによって、それを「商品」とした》(p.239-240)のであり、《十三世紀から十四世紀にかけての時期は銭貨の本格的浸透に伴う人間関係のあり方の大きな変化、それ以前の神仏の権威の低下という、自然と社会の関係の転換に伴い、この「悪」をめぐって、政治的・思想的にきびしい緊張関係》が生まれ、《この「悪」の問題と正面から向かいあった思想家たちが、鎌倉仏教の祖師となっていったことができるのではないか》(p.243)というではないでしょうか。

 なんていいましょうか、『無縁の倫理と資本主義の精神』とも名づけられるべき壮大な著書の概説の「はじめに」となるべき文章を遺して逝ってしまわれたんだな、と思います。

 しかし、その構想はあまりにも大きく、いち歴史学者としての仕事としても大きすぎる感じがします。吉本隆明さんが、『心的現象論序説』で人間の「原生的疎外」と「純粋疎外」という概念に突っ込んでいって、手にあまってしまったような感じかもしれません。

 後で、もう少し書くかもしれませんが、とりあえず、これぐらいで。

[目次]
絵師の心―一遍と「乞食非人」
境界に生きる人びと―聖別から賤視へ
中世の商業と金融―「資本主義」の源流
補論―市の思想
中世における聖と賤の関係について
中世における悪の意味ついて
中世の音の世界―鐘・太鼓・音声
一遍聖絵―過渡期の様相
宗教と経済活動の関係

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Comments

はじめまして。
網野さんのご本がこうして出ることが、仕事の大きさや重さを示しているのでしょうね。岩波新書で「日本中世の民衆像」が出て初めてお仕事を知り衝撃でした。それから読み漁り読み次いで、ついていけなくなり…。
<…なんていいましょうか、『無縁の倫理と資本主義の精神』とも名づけられるべき壮大な著書の概説の「はじめに」となるべき文章を遺して逝ってしまわれたんだな、と思います。…>

ほんとうにそうかもしれないと、思いました。


Posted by: Kunumura Yoh | April 12, 2007 at 12:08 PM

Gnomonさん、はじめまして。コメントありがとうございました。網野先生の手に入りにくかった本が新書や文庫化されるのはありがたいですし、まだ本にもなっていない講演集、対談なども、どんどん出してもらえればな、と思っています。

Posted by: pata | April 12, 2007 at 02:13 PM

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