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April 18, 2007

『気になる部分』

Kininaru_bubun

『気になる部分』岸本佐和子、白水社

 女流のエッセイストらしい、ちょっと変な自分を愛していることを全面的に開放しているような文章が、懐かしいというか軽く読めました。

 岸本さんといえば、なんといってもニコルソン・ベイカーの『中二階』の翻訳が印象的。柴田元幸さんが絶賛しているのを読んで手にとってみたんですが、期待以上の作品を読ませてもらった、という気がします。とはいっても、本質的には小説はあまり読めないので、その後の『もしもし』『フェルマータ』は読んではいないのですが…。

 面白かったのは、神社の絵馬や七夕の短冊から、見も知らない他人の願い事を知ることに感動を覚えているあたり(p.44)。しかし、考えみれば、これだけインターネット上で他人様の日記を読めるようになると、感動は相当、薄れてしまうかもしれませんが。

 車内に春先などに出現するキテレツさんもすさまじい。ぼくも、けっこうアタマが芽吹いちゃった人に出会う機会は多いと思っているのですが、岸本さんが目撃した《毎日顔を合わせていた三十七、八の実直そのものといった感じのサラリーマンが、ある日突然、灰色のスーツもネクタイもそのままに、まっ赤な口紅と青のアイシャドーを塗って、いつもと同じ生真面目な顔で乗っていた》(p.53)というなのには遭遇していません。《不思議なことに、これらキテレツさんたちは、私に目撃されると、まるで示しあわせたように次の日からふっつり現れなくなる。もしかしたら彼らは妖精のような存在で、ごく一部の人の目にしか見えないのかもしれないーあるいは、私の目にしか?》というは優しいオチですね。

 岸本さんはサントリーにつとめていたようですが、OL時代に巨大なビルの中をさっそうと流して歩き、人手の足りない部署から声がかかったら、疾風のように仕事を片付けてしまう「流しのOL」になりたかったと書いていますが、これは、逆の意味でハケンさんたちによって実現されてしまいましたね(p.81)。しかし、うーん、そうか、ハケンさんたちは「流しのOL」なのかもしれない…。

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