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March 17, 2007

『ブッシュのホワイトハウス(下) 』

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『ブッシュのホワイトハウス(下) 』ボブ・ウッドワード著、伏見威蕃 (訳)

 まとめみたいなのはp.358-。

 1)現在のイラクはクルド人、シーア派、スンニ派の三つの勢力によるゆるやかな連合国家がゆるやかにできつつあり、ブッシュ政権の統合された国家警察という考え方はうまくいっていない
 2)何万人ものイラク人たちは自分たちが属する宗派や民族の地域に移動しており、こうした〝足による投票〟(場所や組織を離れることで不満や反対を表わす行動)こそ重視されるべき
 3)ブッシュ大統領は敵方の死者数にこだわって発表しているが、ベトナム戦争の時、北ベトナムの戦死者は100万人にも達していたのに、米国側は5万8000人にとどまっていたにもかかわらず敗北したということを踏まえておらず、いたずらにイラク人の敵愾心をあおっている

 といったあたりでしょうか。つい先頃、ブッシュ大統領のとった増派策は、もっと初期ならうまくいったかもしれませんが、はたして、もう三つに分かれてしまった現在、スンニ派だけをつぶすようなことにならないか心配ですねぇ。

 それにしても増派策と合わせて行なわれたラムズフェルド国防長官の更迭は、古くからいわれていますが、破壊者と建設者は違う、ということに思いをいたします。ラムズフェルドは四軍が統合された小さな機動的な軍事力によって、あっという間にイラクを席巻しましたが、小さな軍隊というコンセプトにこだわるあまり(永遠のライバルであったパウエル国務長官が統合参謀本部長だった時代には圧倒的な戦力を動員して湾岸戦争を戦ったのとは対照的です)、戦後統治でも増員を行なわずに、その判断ミスはフランクス大将になすりつけますが、結局、それが命取りになって辞めさせられたわけです。ラムズフェルド国防長官は、アフガニスタン統治が他の国も入る形で行なわれたために、アルカイダに復活のチャンスを与えてしまったということから、すべてをアメリカのしかも国防省だけでとりしきろうとして失敗するわけですが、そのラムズフェルド長官の失敗のプロセスが上下巻800頁超にわたって描かれていたのがこの本といえるかもしれません。

 小ネタで面白かったのは、大量破壊兵器の探索をまかされていたD・ケイがブッシュ大統領に、どこの国の情報機関が最も優れているかと聞かれ、中国と答えるところ(p.63)。日本なんて目じゃないのかも。

 ラムズフェルドが占領政策の失敗でベトナムについて触れながらイラクの現状を評価している場面で《ベトナム戦争の最中のことを思い出す。どちらを向いても、兵隊を衛生兵ではなく軍医に仕立て上げようとしていた》(p.106)というあたりも印象的。オーバースペックな教育をやろうとしすぎていた、ということなのでしょう。考えてみれば、日本とドイツにはこうした教育に割くリソースが必要なかったということが、占領政策が円滑にいった原因なのかもしれません。

 また、イラク軍解体があそこまで進んだのは、スンニ派が中心だったからでしょうか。現在、旧イラク軍属は軍隊への復帰を認められていますが、ある程度、力が衰えてからではないと、多数派であるシーア派主導の国づくりの中ではまずかったのかもしれません。

 アーミテージの《自分の得意な分野の仕事でトップ立ち、だれもが"あんたは潔い男だ"というときが、辞める時なのだ》(p.133) という言葉は印象的。石原都知事に贈ってあげたいほど。

 また、不利とみられていたブッシュ再選の原動力は《安全に不安を感じる労働者階級と中流階級という新たな票田を獲得した》(p.169)ためと分析しています。自民党も夏の参議院選前に、日本人が安全に不安を感じることが起こってほしい、と思っているかも。怖いことです。にしても、再選が決った瞬間、ブッシュは男泣きに泣きまくったそうです。意外な一面かも(p.167)。

 カード主席補佐官による歴代大統領補佐官を3タイプに分けて分析するという話も面白かったですね(p.173)。1)細かいところまで管理しようとするマイクロマネージャータイプ2)首相タイプ3)まとめ役タイプ。日本の場合も官房長官を同じように分析すると面白いかもしれません。

 キッシンジャーは1972年当時、アメリカはほとんどベトナム戦争に勝つ寸前でいたが、議会やマスコミに遠慮したため、北ベトナムを屈服させる時期を逸したと今でも思っていることに愕然としました。ブッシュの強気というか絶対に退かないという決意だけの戦術も、師匠とあがめて常に教えを請うているキッンジャーからの影響なのかもれません(p.249-)。

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