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February 18, 2007

『小泉官邸の真実』

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『オフレコ!別冊 最高権力の研究 小泉官邸の真実 飯島勲前秘書官が語る!』田原総一朗 (編)、アスコム

 『小泉官邸秘録』の長い後書きみたいなものでしょうか。小泉元首相の主席総理秘書官だった飯島勲さんが田原総一朗さんらの質問に答える形で、さらに少しだけ内閣の実像を掘り下げて解説してくれています。

 いろいろ思うことはあったのですが、まず「小泉という人は派閥の領袖にはならなかったけど、一定回数以上の当選回数を重ねれば、派閥のおかげで高いポストに上がっていくことはできるというシステムのおかげで、総裁選にも出られたんだな」ということ。55体制の1府22省庁の頃は、3年生議員になれば政務次官、次に党務、さらに国会の仕事をこなしたら入閣という確かなコースがあって、小泉元首相のような変人でも厚生大臣や郵政大臣になり、寸前の所で大蔵大臣にもなれそうだったんだな、と(p.47)。

 小泉という人は一匹オオカミで子分を養うためにカネ集めなどはやらないなど、それまでの総理総裁になるための"賭場"では常識とされていたこととは常に逆張りをし続けていたんですけど、最後に55体制が行き詰まったところで、大役満をツモったというか、総取りをやってしまったという感じでしょうか。逆に大負けしたのは鈴木宗男さんあたり。親分の野中さんがカネを集めない人だったので、代わりに30人分やってしまって、最後には塀の中に落ちてしまった、と(p.98-)。亀井静香さんなんかもそうですわな。

 小泉元首相の郵政省嫌いは郵政大臣に就任した時に官僚たちから冷遇されたことが原因といわれていますが、その亀裂が決定的となった原因が最初の記者懇だったとは知りませんでした。当時、郵政省は電波も押さえていましたから、記者会にはテレビの免許を地方の新聞系列の局で取るためだけに活動しているような「波取り記者」もいたそうで、官僚たちから新大臣はちょっとおかしいから近づくな、と云われて、満足に取材もしていなかったらしいんですわ(まあ、宮澤内閣で郵政大臣になっていきなり老人マル優廃止とか云ったわけですから)。

 そんな時期に、飯島さんは小泉郵政大臣の秘書官として郵政記者クラブとの懇談会ぐらいはやらせてくださいという場を設定して、そこに偶然を装って小泉大臣を登場させ、強引に取材してもらおうとしたらしいんです(p.55-)。いやー、記者に大臣を取材してもらうために、ここまで秘書が苦労させられていたとはねぇ…。そこまで郵政官僚が強いとは思ってもみませんでしたねぇ。その場で小泉郵政大臣は護送船団方式の銀行はやがて倒産時代を迎え、その後には郵政民営化となるだろうと語り、「波取り記者」があわてふためいて官僚たちにご注進に及んだ、ということらしいんですね。それで決定的に官僚たちにソッポ向かれた、と。まあ、最後には民営化されてしまったわけですが、それにしても郵政官僚はマスコミには強かったんですよね。

 総理大臣の権力といいますか、アウンの呼吸で予算がつくという話で面白かったのが、自然災害の被災地視察。よく総理大臣が現場っぽい作業服着ていくじゃないですか、あれって、単なるパフォーマンスの時もあるけど、御利益もちゃんとあるらしいんです。何回も激甚災害などを受けた後の場所だと、どう首長たちが頑張っても国は査定してくれないんだそうですが、そんな時に、総理大臣が行けば、もう1回、激甚災害の指定を受けられる余地が生じるそうで、なるほど総理大臣の被災地視察というのは官僚機構にとっては重いんだな、と思いました(p.65-)。

 あとは田中眞紀子外務大臣に対しては、側近の平沢勝栄議員を政務次官に、旦那の直紀議員を農林副大臣に、相談相手だった中谷元議員を防衛庁長官にして、内閣の中に助けとなる人を小泉首相は配置していた、という話は話半分に聞いても面白かったですね(p.111)。というか、それでも暴走した彼女がスゴイというべきか、取り巻きが非力すぎたのか。

 安倍内閣についても機微に触れるような面白い話をしていましたね。《安倍さんの井上秘書官は今、20名近い記者に対して、ぶら下がりやレクチャー懇談会を毎日やってるんですね。ところが、私はやっていないんです》(p.123)。小泉さんは毎日2回、テレビカメラの前でしゃべっていたし、昼飯でソバを喰うところなんかも取材させていましたからねぇ。それが今ではテレビカメラの前は1日1回、しかも毎日定時帰宅が多く、それで秘書官が代わりに取材受けなきゃならないんですから「これじゃあな…」みたいな。

 ブッシュ大統領の話で笑ったのは、日本の神社の御札を大切にしていること。テキサス州知事選挙は最初、誰も当選しないだろうと云われていたんですが、そんな時期に、ある会社の副社長が明治神宮の「祈必勝」の御札を届けたら勝ってしまった、と。さらに「大願成就」の御札も届けた、と。日本の伝統だから花まで添えて。そしたら最終的には大統領にもなってしまったということで、今ではホワイトハウスの自室にも御札が飾ってあるそうです(p.138)。ブッシュっていうのは、一番、そういうことのキライなゴリゴリの右派キリスト教というか福音派だったんじゃないの、と思いますが、どうなんでしょうかね。

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